×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


2





「あ?キノコ狩り?今この山がどれだけ危険かしらんのか」


助けてもらったお礼に川沿いで鍋をオッサンに振る舞う私ら。神楽に作らせたけど、なかなか美味いじゃないか。


「お前らも見ただろう。あの奇妙なキノコ」


聞くと、あのキノコは近頃この山で広まった亜種で寄生されると栄養のために寄生された奴は狩猟をするとか。さっきの正宗とかいう熊も、前は賢くて山のヌシとか言われていたが、キノコによって人里を荒らすようになったという。


「そこで俺の出番ってわけだ。俺は銃の名手でな、巨熊ごときにひけはとらねぇ」
「報酬目当てか?」
「そんなんじゃねーさ。まァ、奴とは少しいろいろあってな…」


ふーん…。


「…ハァー。あんな化物がいるんじゃ松茸なんていってる場合じゃねーな」
『だから言ったじゃんか』
「仕方ねェ、俺達は山おりるとするか」
『そうそう。自分の命投げ出してまで松茸なんかいらないし』


やっぱ私らにはなめこがお似合いなんだよ。


「…って銀さァァん!架珠さァァん!頭からキノコ生えてますよォォォ!」
「『え?』」


言われて頭を触ってみる。ぽふんと手のひらに伝わる感触。あ、ホントだ。


「プフッ。頭ちゃんと使って生活しないからアルヨ〜」
「いや、お前も生えてるぞォォ!ってアレ?僕もォォ!」
「言わんこっちゃねェ…奴に寄生されたな。素人が山をナメるからそんなことになるんだ」
「お前もな!!」


オッサン、キノコ生えてるよ。


「アレェっ!?なんでェェェ!?ちょっ…お前らこの鍋に何を入れた!!」
「失礼アル!私の鍋にケチつけるアルかァ!?熊の頭に生えたキノコなんてそうそう食えないアルヨ!」
「「『お前何してくれてんだァ!死体に生えたキノコ入れる奴があるかァァ!!』」」


やっぱ神楽に任せるんじゃなかった!!


「ア゛ア゛ア゛ア゛!最悪だァァ僕らどうなるんだァ!」
「このままじゃ奴らの仲間入りだ。キノコに寄生された生きる屍と化す」
『どうすんの!?このまま黙ってキノコに寄生されていくの!?』
「落ちつけ。初期段階なら里におりて治療すれば間に合う」


なんだ、早く言ってよ。


「だがそれまで頭のキノコには決して触れるな!何が起こるかわからな…」


ーーーーブチ!


「『人の話をきけェェ!』」


なんで抜くかな神楽ちゃん!?

すると驚くべきことにキノコを抜いた神楽の頭からキノコがポコポコと生えてきた。


「うわァァァァなんか増殖しちゃったよォォ!!」
「オイ、何うれしそーな顔してんだ?一杯あっても別にエラクねーんだよ」


キノコが増えて嬉しがるなよ。


「魔理之介さんどーすればいいんですか!?何とかしてくださいよ、アンタなら何とかできるでしょ!!」
「人をキノコ博士みてーに言うな!」


…あ。


「オォオオオォオォ!!」
「ウソォォォォォ!?」


目の前に再び現れた熊に私らはぎょっとする。


「最悪だァァ!!なんでよりによってこんな時にィィ!!」


運がないんだよ私ら。するとオッサンが銃を構えて熊に撃った。


「オイ、俺がコイツ引きつけとくから、その間にお前らは里に逃げな」


熊と対峙しながらオッサンは言う。


「男の喧嘩は神聖なモンだ、邪魔はいらねー。なァ?正宗よ」


私は隣の定春の背中をポン、と叩いて走り出す。すると背後でなっ!とオッサンの驚く声が。


「オイオイオイどこ連れてくつもりだ離してくれ、俺ァ奴と決着つけなきゃならねーんだよ!」
「なに考えてんだおっ死ぬぞアンタ!!」
「うるせーほっといてくれ、オメーらには関係ない」


オッサンを定春に運ばせながらしばらく走ると木の下に隙間を発見。


「銀さん、あそこあそこ!あそこに隠れましょう!」


潜り込んだ直後、熊が中に入ってこようと腕を中にのばしてくる。ホラー映画のワンシーンみたい。


「こりゃ長くはもちそーにねーな」
「ここも俺達もな」
「…ったく、余計なことしてくれやがって。お前らのせいで予定が狂わされっぱなしだぜ」
「なにかい?熊に食われるのがアンタの予定だってのかよ」


イヤな予定だね。


「…昔なァ、ある所に狩人の村があった」


そこは自然を殺して生きている村で、そこの掟には神聖な狩り以外では一切の生殺与奪に関わらないとあったそうだ。だがある男が情に流され掟を破った。でも掟はそれを許さなかった。


「男はあの時から、銃を何かに向けることができなくなっていたのさ。その後、男は人づてに噂を耳にする。片目の巨熊が里を荒らしていると」


……もしかしてその男ってさ…。


「…アイツは人間に復讐しようとしている。無慈悲に親を奪われ…身勝手に人間に捨てられ。奴をあんな化物にしちまったのはまぎれもねェ…この俺だ。奴の苦しみも里の者たちの苦しみも、俺が掟を破ったことで生まれた。アイツを止めるのは、俺しかいない。俺が止めなきゃならねーんだ。たとえ止められなくとも、奴の手にかかって死ぬ。もうそれ位しか…俺のしてやれることはねーんだよ」


言うとオッサンは熊に向かって銃をぶっ放した。きいちゃいなかったけど。


「やっぱ効かねーか。そのドタマのキノコぶっ飛ばすしかお前を救う道はなさそーだな」


言うやオッサンは熊にまた撃った。殺ったかと思っていると、オッサンが熊に殴られていた。


「!」


倒れたオッサンに向かっていく熊。


「!!」


ま、させないけどさ。


「お前ら、何で!」
「魔理之介さーん!」


オッサンに向かっていっていた熊を私、銀ちゃん、神楽でくい止め、その隙に新八がオッサンに銃を投げ渡した。キャッチしたオッサンは再び向かってきた熊に銃口を突きつけた。すると、熊は驚くことに自ら銃口に脳天をつけた。


「…………すまねェ…」


そう言ったオッサンは泣いていた。直後、辺りに銃声が響き渡った…。





「何だか、いろいろ迷惑かけちまったが、これからお前らはどうするんだ?」


あの後私らは山をおりて頭のキノコを取り除いてもらった。やっと頭がスッキリしたよ。


「もうキノコ狩りはウンザリだからな」
『次はどうする?』
「次はブドウ狩りアルヨ」


ブドウか…私は梨がいいな。


「フフ、こりねェ奴らだ」
「アンタはどうすんだ?」


さっさと去っていくオッサンに銀ちゃんが問う。


「フン、俺も掟だなんだってのはもうウンザリなんでな。これからは自由に生きるさ、アイツの分までな…」


ま、せいぜい長生きしなよ。


next.

back