そんなに松茸って美味しいもんなのか一度よく考えてみよう
「いやいやいやいや。これは無理ですよ、どう見ても毒キノコですもん」
秋、といえば松茸だろうと誰かが言ったのを気に、高級食材を買う金なんてない私らは、自給自足ということで山に茸狩りに来ていた。そこで銀ちゃんが見つけたキノコは毒々しい色と形をしたキノコだった。
『マジでこれ食べる気?』
「何度も同じことを言わせるな。グロいもの程食ったらウメーんだよ。塩辛然りかにみそ然り」
『だから何度も言うけど、塩辛もかにみそもこれ程グロくないっつーの』
「この奇怪な色は警戒色ですよ。「俺は毒もってるぜ近よるな」っていう」
「そーゆー尖ったロンリーウルフに限って根は優しかったりするんだよ」
それがホントだとして、それをキノコに当てはめるなよ。
「どーだ定春?」
一本キノコを採ると、銀ちゃんは定春に臭いを嗅がせた。すると定春は明らかな拒絶した顔をしてくしゃみをしながら顔を背けた。
『ほら、やっぱ毒キノコだよ』
「いや…クゥ〜いい香りだ。これは松茸に優る極上品だぜさすが銀さんだ(銀サン裏声)」
「何勝手に訳してんの。明らかに拒絶してるでしょ」
「メガネうるせーよ。銀さんに逆らうな。どーせ椎茸しか食ったことねーんだろ?(銀サン裏声)」
「アンタもどーせなめこ汁が限界だろ貧乏侍よ〜(新八裏声)」
『うぜェェ!裏声うぜェェェ!!』
「銀ちゃん、架珠、新八、見て見て!」
ん?と一人別行動していた神楽のはしゃいだ声に、私らは振り向く。
「コレ、スゴいの見つけたよ。コレも食べれるアルか?」
のっしのっしと背中に神楽が抱えてるのはドデカい熊だった。それを見た私ら三人と一匹は顔をおもっくそしかめて固まった。
「どっ…どっから拾ってきたんだそんなモンこっちに来んなァァ!!」
『ふざけんなァァ変なモン拾ってくんじゃねェさっさと捨ててこい!!』
「そのまま故郷に帰れ!そのまま所帯をもて!そのまま幸せになれ!」
「アラアラ三人ともはしゃいじゃって。大丈夫ですよ、みんなで平等にわけましょーね」
「いらねーよそんなの…ってゆーか何それ?しっ…死んでるの?それ」
「わかんない。何かむこうに落ちてたアル」
「お前なんでも拾ってくんのやめろって言ったろ」
『…つーか、この熊頭にキノコ生えてんだけど』
「アレだろ。あんまり頭使わなかったから…」
『は?関係あんの?』
「三丁目の岸部さんっているじゃん。あそこのジーさんも生えてた」
「マジアルか気をつけよ」
銀ちゃん嘘つくなよ。
「猟師にやられたのか…どのみちそんなに長居できませんね」
『ちぇ。せっかくわざわざこんなとこまで来たっていうのに…』
松茸じゃなくても美味しい茸は食べたかった。でも、熊いるならなァ…命かけてまで茸狩は阿呆らしい。
「バカヤロー、怖気づいてんじゃねーぞ。まだ松茸の一本も手に入れてねーんだぞ。虎穴に入らずんば虎児を得ずだ」
『意味分かってちゃんと言ってる?』
「熊が恐くてキノコ狩りができるかコンチキショー」
「コンチキショー」
そう言って二人仲良く変な松茸ソングを歌いながら先を行きだした。続いて仕方なしに行こうとした私だったが、ガシッと新八に腕を掴まれた。なんだよ一体。
『なに』
「あ、あれ…」
は?新八の視線の先である銀ちゃん達の頭上を見た私は固まった。
「ま〜つ〜た〜けラララま〜つ〜た〜け」
「銀さん」
『神楽』
「『うえうえ!』」
ん?と二人が見上げた先には、木よりも大きな巨大熊。助けにはちょっと行けないけど、私も新八も心配ぐらいはする。どーすんだあの二人…!
「「ぐふっ」」
『って死んだフリかよ!!』
「イカンイカン、死んだフリはいかんよ!迷信だから、迷信だからそれ!」
草むらから新八が地面に倒れる二人に言う。つーか迷信だったのか。
「…銀ちゃん、迷信だって…」
「………」
あいつとことん死んだフリ貫き通してるよ。
「あっ、ズルいよ!自分だけ本格的に死んだフリして!熊さーん、この人生きてますヨ!」
ーーーーパン.
「ホラ見ろ生きてた!」
やってる場合か。
「ガタガタ騒ぐな、心頭滅却して死んだフリすれば熊にも必ず通ずる。さあ目をつぶれ」
「ウン。おやすみ銀ちゃん」
ーーーーガシャァ!!
「「ぐはぶ!!」」
「銀さん神楽ちゃん!」
バカやってたら熊に木ごと殴られていた。ちょ、マジでヤバいんじゃ…。
「オイオイ、今どき死んだフリなんてレトロな奴らだねぇ」
「『!』」
え、誰このオッサン。
「「待て待て待てタンマ、タンマ!」」
熊に通じるか!すると隣のオッサンが熊に向かって煙幕を投げつけた。
「オーイこっちだァ」
オッサンの声に煙幕に紛れ銀ちゃん達はこちらに来た。熊も森の奥へと戻っていく。
「アレは正宗≠チていってなァ、いわばこの山のヌシよ」
「アンタ…」
「俺は魔理之介。奴を追う者だ」
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