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べちゃべちゃした団子なんてなぁ、団子じゃねぇバカヤロー




「愛だァ?夢だァ?若い時代に必要なのは、そんな甘っちょろいもんじゃねーよ。そう…カルシウムだ。カルシウムさえとっときゃ全てうまくいくんだよ。受験戦争、親との確執、気になるあの娘。とりあえずカルシウムとっときゃ全てうまく…」
「いくわけねーだろ!!幾らカルシウムとってたってなァ、車にはねられりゃ骨も折れるわ!!」


前回、車にはねられた新八は足の骨を折っていた。私らはそのお見舞いに来ている。


「俺や架珠もはねられたけどピンピンしてんじゃねーか。毎日、コイツ飲んでるおかげだよ」
「いちご牛乳しか飲めないくせにエラそーなんだよ!」
「んだコラァァ。コーヒー牛乳も飲めるぞ!!」


だからなんだよ。するとババアナースに煩いと注意されてしまった。


「他の患者さんの迷惑なんだよ!!今まさにデッドオアアライブさまよう患者さんだっていんだよ、ボケが!!」
「あ…スンマセン」


つーかババア、お前の声の方が煩いわ。


「オイオイ、エライのと相部屋だな」
「えぇ。もう長くはないらしいですよ。僕が来てからずっと、あの調子なんです」
『そのわりには家族が誰も来てないね』
「あの歳までずっと独り者だったらしいですよ。相当な遊び人だったって噂です」


つーか新八、よく知ってんね。


「まっ、人間死ぬ時ゃ独りさ。そろそろいくわ。万事屋の仕事もあることだし」
「万事屋アアアアア!!」
「ぎゃああああ!!」
「「『!!』」」


いきなりの声に驚いてみれば、今まさに死にかけだったじーさんが起き上がっていた。


「今…万事屋って…言ったな…それ何?何でも…して…くれんの?」


ヨロヨロと凄い形相で近寄ってくるじーさんが怖すぎる。


「いや…なんでもって言っても死者の蘇生は無理よ!!ちょっ…こっち来んな!!のわァァァァ!!」


ーーーーしゃらん.


「『?』」
「コ…コレ。コイツの持ち主捜してくれんか?」


じーさんが差し出してきたのは、かんざしだった。





「団子屋かんざし=Hそんなもんしらねーな」


死にかけだろーが幽霊のようだろーが依頼は依頼。引き受けた私らは行きつけの団子屋で聞き込み中。


「昔、この辺にあったってきいたぜ」
「ダメだ俺ァ、三日以上前のことは思い出せねェ。それよりよォ銀時。お前、たまったツケ払ってけよ」


無視。


「そのかんざし≠ナ奉公してた綾乃って娘を捜してんだ」
『まあ、娘って言っても、五十年も前の話だから今はバーサンだろーけどね』
「ダメだ俺ァ、四十以上の女には興味ねーから。それよりよォ架珠。お前たまったツケ払ってけよ」


無視。

その場を離れた私らが次に出た作戦は…。


「オーイ、さすがに無理だろコレ」
『五十年も前だよ?匂いなんか…』


定春にかんざしの匂いを嗅がせて捜すという作戦。


「わからないアルヨ。綾乃さん、もしかして体臭キツかったかもしれないアル」
「バカ。別ぴんさんってのは、理屈抜きでいい匂いがするものなの」
『そうそう私みたいに』
「架珠はいつも雑草みたいな匂いがするアル」
『雑草!?どーいうことそれ!?』
「そりゃあ別ぴんじゃねーってこと…ん。オイ定春!お前、家戻って来てんじゃねーか!!散歩気分かバカヤロー!!」


定春が立ち止まった場所はスナックお登勢の前。やっぱり無理だったか。しかし、定春は戸をバンバンと叩き、まるでここだ、と言っているようだ。


『ちょっと…』
「オイまさか…」


え…?


「なんだよ。家賃払いに来たのかイ」


出てきたのはお登勢さんだけ。


「お前、こちとら夜の蝶だからよォ。昼間は活動停止してるっつったろ。来るなら夜来いボケ」
「………いやいや。これはないよな」
「『ナイナイ』」
「綾乃ってツラじゃねーもんな」


アハハハハと笑っていた私らに、衝撃的な爆弾が落とされた。


「なんで私の本名しってんだィ?」


目の前が真っ暗になった。


「ウソつくんじゃねェェェババァ!!」
『アンタが綾乃のわけないでしょ!!』
「百歩譲っても上に宇宙戦艦≠ェつくよ!!」
「オイぃぃぃ!!メカ扱いかァァァ!!」


あったり前でしょ!?


「お登勢ってのは夜の名…いわば源氏名よ。私の本名は、寺田綾乃っていうんだイ」


なんかやる気なくなっちゃったなオイ、と私らは話し合う。


「なに嫌そーな顔してんだコラァァァ!!」


その時、店の電話が鳴って、お登勢さんはそちらへと向かった。


「ハイスナックお登勢…なに?いるよ、銀時なら。新八から電話」
「なによ」
「なんか、ジーさんがもうヤバイとか言ってるけど」





「非常に危険な状態だ。君、知り合いだよね?そろそろ覚悟しといた方がいいよ……しかしアレだな。女遊びの激しい人だときいていたが…誰一人として最後を看取りに来てくれないとは…寂しいもんだな。君だけでも死に水ってやってくれ」
「先生、脈弱まってきました」
「いよいよか」


ーーーーゴガシャン.


「!!」
「ギャアアアアアアア!!」


定春に乗って猛スピードで窓を突き破って入ってきた私らに医者どもは驚いていた。だって急いでいたから仕方ないっしょ?


「おいじーさん。連れて来てやったぞ」
「い゛っ!?お登勢さん!?」


まあ、驚くよねそりゃあ。

意識がなかったじーさんが目を覚ました。


「オイ、きーてんのかジーさん」
「ちょっ、何やってんの君ィィィ!!」


じーさんの頭をひっぱたいた銀ちゃんは医者に怒られた。そりゃそうだ。


「かんざしはキッチリ返したからな…」
『ちゃんと見えてるじーさん?』
「…綾乃さん」


酸素マスクを外したじーさんの目には涙が。


「アンタやっぱ…かんざしよく似合うなァ…」


にこっと微笑んだお登勢さんは手を取ると一言こう言った。


「ありがとう」


そして、じーさんは幸せそーな顔して逝った。


「…バーさんよォ。アンタひょっとして覚えてたってことはねーよな?」


帰り道、銀ちゃんが私も思っていたことをお登勢さんにきいた。


「フン、さあね。さてと…団子でも食べにいくとするかイ」
「ん…ああ」


銀ちゃんと二人して幻だったのかと目をこする。いやだってさ、振り向いたお登勢さんが一瞬、若い頃の姿に見えたんだけど…。


『…気のせいか』


シャランとかんざしの音を鳴らして先を歩くお登勢さんに続いた。


next.

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