35

ぶつかり合う力と力の衝突。大きな風を巻き起こして辺りを巻き込んだ爆発に、敵も味方も皆が城の天守を見上げた。暗黒は深く底へ落ちていき、立ち上がった二つの人影を、分厚い雲が散りゆく空が、陽の光が明るく照らし出した。

うぉぉおおぉおぉぉぉ…!!!

勝鬨の雄叫びが響く。連合軍は諸手を上げて彼ら二人を讃えた。
魔王は討ち取られたのだ。



「姉上ッ!!!」

戻ってくるなり、依の元へ駆け出して彼女を抱き締める幸村。その身なりはボロボロで、至る所が傷だらけであった。

「ゆき、むら・・・」

ぎゅう、としてから顔を覗き込んでくる彼の頬にそろそろと手を伸ばす。そこは、戦の前に彼を奮い立たせる為に、彼女が張ったところだった。申し訳なさげな、悲しげな彼女の瞳に、幸村は伸ばされた手を握り締めて自らの頬に当てがった。

「姉上のおかげで目が覚め、こうして政宗殿と共に魔王を討ち取る事が出来たのです。そんな悲しい顔をされないでくだされ」
「ですが・・・」

それでも言い淀む依に、では、と彼は呟いた。

「では、いつものように、労ってくださりませぬか?姉上にそうされると、俺は幸せな気持ちになりまする」

そう言ってくれた彼にハッと顔を上げて、依は嬉しさで潤んだ瞳で彼の頬に口付けた。そうして幸村は、それはそれは幸せそうに微笑んだ。

「あー・・・いいなあ真田の奴・・・」
「諦めろ元親。依の一番はいつだって弟君だから」

そんな彼らを眺めつつ溜息を吐く元親の肩を慶次は優しく叩いて慰める。この二人は何処までも気が合ってしまうようだった。一緒にそれを眺めていた佐助は、フッと鼻で笑って言った。

「ま、そんなこと言ってるうちは依様の一番にはなれないよーってね」

するり、と抜けて仲睦まじい姉弟の元へ向かった佐助は、何か彼らに話し掛けると幸村から身体を離した依に抱き締められて、そうして頬を優しく撫でられていた。何とも、上手い事である。

「「・・・」」
「俺、もう甲斐に住もうかなあ」
「慶次、早まるな・・・重ねてきた年月をひっくり返そうぜ・・・!」



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