腐れ縁の彼のお仕事

腐れ縁は誤魔化せないの続き




さて、なぜ三春と彼、沖矢昴・・・の中の人である赤井秀一が知り合いなのかという話をしておこうか。

三春は職業フリーライターの所謂自由業であって、軽いフットワークを効かせて色んな世界へ行って回って入って取材をし、記事を上げては収入を得ている男な訳なのだが、そういった取材の合間にイギリスやアメリカの優作や有希子のところへ転がり込んだりもする訳で、それが他所へ泊まるより余程居心地が良いのでやっぱり彼らの居る国への渡航は増える訳なのである。
だから必然的に、アメリカへはよく行っていたのだ。それでもって、その腐れ縁の男の所為で事件に巻き込まれたりもする訳で、ちゃっかりとFBIにお世話になったりなんかもしたりして。そんなことをしていると歳の近い日系の男と知り合いになったりすることもあり、しかも気があってしまったりして思わず意気投合なんて事もあるものなのだ。

「連絡がなくなったから、忙しいのか潜入中なのか死んだのかのどれかだと思ってはいたが・・・」
「死んだとは失礼な奴だな、ならばもっと再会を喜んでくれても良いだろう」

変装をベリベリと剥がしたその様は本当に気持ちが悪かった。顔を剥ぐとは何事か。思わず声を上げてしまった三春に一番嬉しそうに反応したのは有希子であった。この技術はどうやら彼女のものであるらしい。それを毎週末帰国しては彼に教えているというのだから、世の中全くわからない。FBIのスーパーエージェントが元女優と言えども一介のおば・・・"お姉さん"に教えを乞うとは。

「・・・痛い、有希子ちゃんは俺に対してバイオレンスが過ぎる」
「あら、なんのことかしら?」

良い音を立てて叩かれた頭を摩りながら話を聞くと、何やら赤井が沖矢になってしまった訳と、新一がコナンになってしまった訳とでは原因が同じであるという。お互いに良い協力関係を結びながら、悪を排除というところか。さすが謎解き探偵一家。事件が俺を呼んでいるというやつである。

「それで、その組織の奴らが酒の名前な訳?」
「!!!なんで知ってるの、三春兄ッッッ!!」

これで優作から頼まれていた事が繋がったと頷いて言葉を溢せば、新一・・・じゃなかった、コナンの瞳が見開かれた。おいおい、そんなに大きな目を開いたら落ちてしまうぞ。

「私が頼んだんだよ」

見当違いなことを考えていた三春の代わりに口を開いたのは優作だった。

「三春は色んな方面に顔が効くんだ、そして記憶力が抜群に良い」
「だからって・・・!」

三春はどうあっても一般人だ。そんな彼を自ずから巻き込む父の意図が理解出来ずコナンは眉根を寄せる。しかしこの場で彼がいくら反対しようと、三春は既に話を聞いてしまって片足を突っ込んでいるのだ。他でもない、父の所為で。

「大丈夫だって、俺もそこまで足を突っ込む気はないし」

お前達みたいに、完璧な正義の味方は出来ないからな。そう言う彼を唇を噛んで俯いていたコナンが見上げると、今まで見たことないような笑顔を形作っていた。

「フリーライターという身の上では、少々他より情報が集まってくるものなんだ。俺はそれを、必要に応じて使っている」
「どういうこと・・・」

一般人の筈の、清いところでぬくぬくと生活していた筈の、父の古い友人なだけの筈の、その彼が、急に、見たこともない表情をすることに、コナンは戸惑いを隠せない。

「"俺と話す為"に、お金を払う人間がいるということだよ、新一」

つまりは、俺も最初から此方側という訳だ、と言って笑った三春に、驚愕の表情を浮かべて父を見上げる。

「私が難解な事件を解く時に、情報を集める為に最初に頼るのは彼だよ」
「俺も仕事を頼んだ事がある」

悪戯が成功したように口の端を吊り上げる父に便乗するようにして、赤井も僅かに口角を上げている。知らぬは己ばかりであったらしいと、コナンは、新一はただただ驚くしかなかった。



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