「よかったのかい、幸村」
「嗚呼・・・やはり、三春には佐助の隣が一番良いでござるよ」
失恋になる筈の幸村の、酷く満足そうな顔に元親が彼の頭を撫でた。
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「三春」
「なあに佐助」
「なにしてるの」
何って、見ての通りじゃない。
不思議そうに首を傾げる彼女は、何故か幸村の膝の上に座っていて、ヒクリと佐助の口の端が引きつった。
「三春、ここが分からぬ」
「ああ、これはね、xを代入して…」
図書委員の元就の目の光る図書室には気の置けないメンバーしか居ないからか、口調が前のものに戻っている幸村が、彼女の肩に顎を乗せるようにして尋ねる。誰だコレを初心だと言ったのは。腰に回された手を抓りたい衝動に駆られながら、佐助はパコリと持っていた缶を握りつぶすだけでその言いようのない衝動に堪えた。
「これじゃあどっちがboy friendだか分かんねぇなァ」
「五月蠅いよ独眼竜」
どかり、と肩に重みが乗る。にやにやと楽し気に寄ってくる政宗を退かしつつ、佐助は幸村のすぐ隣に座った。
「なあに、佐助も数学わからないの?」
「うん、」
「あれ・・・?佐助、この間のテスト90点じゃなかった?」
「ちょっ、風来坊ッ!!」
佐助の可愛い努力も虚しくバラされる事実に、ならば邪魔をするなと幸村に睨まれて、渋々立ち上がろうとした頭に柔らかい重みが乗る。
「ふふ、もう少し良い子にしててね」
「・・・」
柔らかく微笑む三春に、いろいろと思うところがあったのを全て放り投げてこくりと頷いてしまうのは惚れた弱みか。
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「・・・アイツ、三春と幸村に遊ばれてンの気付いてねェな、アレ」
「ふん、散々待たせたのだからこの程度かわいいものであろう」
呆れたような二人の声は、気分を良くして政宗に絡みに行った佐助には聞こえていなかった。
20170316修正