追い詰められるリミット
だめだ。
びくともしない壁に手を付け、ツナは強く歯ぎしりをした。
目の前、立ちふさがる球針態は、どれほど炎をぶつけてもヒビが入る気配すらしない。
「……っ、はっ、はぁ、は……」
「!」
耳に届いたかすかな呼吸音に、ツナははっとして振り返った。
真っ暗な視界の中、ぐらりと傾く何かの気配。
「雛香!」
「っ、く……いき、が……」
ずず、と壁を身体がずる音とともに、掠れた声が途切れ途切れに耳に届く。
しまった、とツナは顔を歪めた。
『……雛香兄の身体はとりあえず大丈夫だけど、〈催眠〉の反動でかなり弱ってる。……危険な状態だよ』
幾日か前、そう告げた時のフゥ太の暗い顔が脳裏をよぎる。
すっかり忘れていた自分に歯噛みしながら、ツナは感覚を頼りに雛香のもとへと駆け寄った。
「雛香、大丈夫か?!しっかりしろ!」
「……っ、俺は、いいから……むしろ、手伝えなくて……ごめ…」
「雛香!」
閉ざされた空間の中、虚ろに響く雛香の声。
手を伸ばせば、壁に脱力しきった体を預ける雛香の頬を指先が掠めた。
感覚を頼りに腕を回せば、その小柄な体が微かに痙攣しているのがこちらに伝わる。
「……雛香…ッ!」
このままでは、彼が。
***
「……そろそろ、だな」
リボーンは静かに目を細める。
(……死に追い込まれた2人の、本当の覚悟が試されるのは)