君を咬み殺す3 | ナノ




追い詰められるリミット
 だめだ。
 びくともしない壁に手を付け、ツナは強く歯ぎしりをした。
 目の前、立ちふさがる球針態は、どれほど炎をぶつけてもヒビが入る気配すらしない。

「……っ、はっ、はぁ、は……」
「!」

 耳に届いたかすかな呼吸音に、ツナははっとして振り返った。
 真っ暗な視界の中、ぐらりと傾く何かの気配。

「雛香!」
「っ、く……いき、が……」

 ずず、と壁を身体がずる音とともに、掠れた声が途切れ途切れに耳に届く。
 しまった、とツナは顔を歪めた。


『……雛香兄の身体はとりあえず大丈夫だけど、〈催眠〉の反動でかなり弱ってる。……危険な状態だよ』
 幾日か前、そう告げた時のフゥ太の暗い顔が脳裏をよぎる。


 すっかり忘れていた自分に歯噛みしながら、ツナは感覚を頼りに雛香のもとへと駆け寄った。
「雛香、大丈夫か?!しっかりしろ!」
「……っ、俺は、いいから……むしろ、手伝えなくて……ごめ…」
「雛香!」
 閉ざされた空間の中、虚ろに響く雛香の声。
 手を伸ばせば、壁に脱力しきった体を預ける雛香の頬を指先が掠めた。
 感覚を頼りに腕を回せば、その小柄な体が微かに痙攣しているのがこちらに伝わる。

「……雛香…ッ!」

 このままでは、彼が。


***




「……そろそろ、だな」
 リボーンは静かに目を細める。


(……死に追い込まれた2人の、本当の覚悟が試されるのは)





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