未発達な僕ら
「じゃあ……山本は……!」
「生きてるよ!けっこう元気に!」
雛乃・草壁に運ばれ手当をされ、無事意識を取り戻した獄寺。
ツナは安堵の息を吐き、包帯だらけの彼に最高の報告を告げた。
まだ動けそうにない深い傷ばかりだけれど、山本の容態を聞けば獄寺も喜ぶはず……!
「ちぇ……生きてやがったのかあいつ……」
「ええー?!」
い、いつも通り(に山本が嫌い)だこの人ー!!
内心ショックを受けながらも、ツナは静かに唇を噛んだ。
気がつけば自分のことに手一杯で、獄寺や山本のことも、そして京子のことだって彼女が無茶な行動に出るまで、何ひとつ気付けなかったなんて……。
「そりゃーそうだぞ」
己の視界の狭さに歯噛みするツナの横、見計らったようにリボーンが言い放つ。
「なぁ?!」
「お前らは経験不足で不安定で、すぐに血迷ってイタイ間違いをおかしやがるからな」
「そ、そこまで言うか?!」
いつも以上にズタボロなリボーンの発言に、ツナは目をむく。
「だが、今は死ななきゃそれでいーんだ」
「……え」
ツナは目をぱちくりさせる。
「イタイ間違いにぶつかるたびにぐんぐん伸びるのが、お前たちの最大の武器だからな」
「リ、ボーン……」
どこか褒めているとも取れる家庭教師の言葉に、ツナは一瞬目元を赤くする。
「……ってか、赤ん坊のお前に言われたくな…!」
「話」
通常モードに戻りかけたツナの真後ろに突如、
ずいっと進み出る、見覚えのある青年。
「話、いいかな」
「ひいっ、雲雀さん?!」
「会いたかったぞ雲雀」
「僕もだ赤ん坊」
ひるみ白目をむくツナを華麗にスルーし、交わされる2人の言葉。
数時間前、雛乃との冷ややかなやりとりの余韻さえ無いその姿に、ツナは戸惑いを覚えながらもさすがに尋ねる勇気は湧いてこない。
ていうか背高いなあ髪短いなあ……とどうでもいい考えに至るツナの前、ふと、思い出した、という顔でリボーンが口を開いた。
「雛香の調子はどうだ」
「とりあえずは無事だよ。こんな時ばかりは治療関連に力を入れていたボンゴレボスに感謝するね」
え、それって俺のこと……と思わず顔を上げたツナの視界の端、ぴくり、と腕を揺らした銀髪が見えた。
「……え」
獄寺君?
振り返ったツナの後ろ、ベッドに横たわったままの獄寺の姿が目に入る。
未だ力の入らないはずの彼は、しかし、その両手でぎゅっとシーツを握りしめていた。包帯だらけの手の内で、握られたシーツに細長いシワが、くっきりと幾重も刻まれる。
その表情を見、ツナは思わず息を呑んだ。
「……獄寺、くん……?」
彼は、その銀の瞳を伏せ、ひどく険しい表情をしていた。