愛しき兵器と嵐の使命
「なっ、なんだあこれは?!オイラの黒鎌〈ダークスライサー〉を!!」
「いい子だね、オルトロス……そのまま、もう少しお願い」
野猿が勢いよく振り下ろした鎌の先、
鋭い犬歯の生えた口で刃をくわえ、ギリギリとその武器を押さえ込むのは、
藍色の炎をまとう、巨大な2つ首の犬。
「……こっ、このヘンテコな犬の匣……まさかッ……」
「ヘンテコとは失礼だな。彼の名はオルトロス……2つの頭を持つ、僕の可愛い相棒だよ」
まあ、雛香には劣るけどね。
付け加えられた言葉を当然聞くはずもなく、野猿は鎌を押し返す2つの口に頬を引き攣らせた。
「しゃらくせーっ!死ねよっ!!」
「僕の炎に勝てるものなら」
ふ、と妖艶さすら感じる笑みを浮かべた雛乃は、振り返り声を張り上げた。
「獄寺ッ!」
「うるせぇっつーのっ!!……で、これ何なんだよ?!」
叫び返す獄寺の左腕にあるのは、
ギラギラと光る、やたらと派手なドクロの口。
「……うわー、何それ……」
匣を開けられたのは良かったが、これはまた悪趣味な。
「なんっで引き気味なんだよてめぇはっ!」
つーかこれどうすんだよ!と喚く獄寺に、雛乃は肩をすくめて笑った。
「わかんないんなら、使えないね」
「……っ!てめぇ!」
ほんっとーに性格悪くなりやがったな、そう吐き捨てた獄寺の顔が、真顔になる。
(……そうだよ、獄寺)
眉をひそめて腕の匣兵器を操作しだした獄寺に、雛乃は静かに口角を上げた。
「……常に攻撃の核となり、休む事のない怒涛の嵐」
それが、君の使命だから。