君を咬み殺す3 | ナノ




懐かしき再会
 ツナ達が辿り着いた、その屋上とはまた、別の棟の屋上で――。

「……あなたは」
「そうあわてなくても、みっちり鍛えてやっから」

 睨み上げる雲雀。
 悠々と見下ろす10年後のディーノ。

「……ヤダ」
 だが雲雀はギラリ、目を光らせたかと思えば、

「――うおっと!!」
「あなたは即刻咬み殺す」

 一瞬で、そのトンファーを振り下ろした。

「……あいっかわらず喧嘩っ早いな、お前は〜」
「あなたも腕は落ちてないみたいだね」

 異常な速度で飛び込んできた雲雀の武器を、がっちりと革製の鞭が押さえ込んでいる。

「またあの頃みたいに修行してやるよ」
「あなたの師匠面にはうんざりだ」
「俺も同感」
「「!」」

 言い合っていた2人の上に、突然落ちる影。

「ちょっ、おっと!」「っ、」
 とっさにその場から飛びのいた両者の間に、
 激突する黒い炎。

「……おいおい、勘弁してくれよ。可愛くないのはお前もか」
「ケル、あっちの金髪だけもっかい焼き尽くしてくれ」
「ちょっ、マジかよ雛香?!」
「……君」

 空中、ふわりと黒い物体から飛び降りた少年を見、雲雀がすっと目を細める。
 よくよく見ればそれは物体ではなく、頭が3つある犬(……にしては大きすぎる)だった。

「君、さっき群れと一緒にいただろ。いいのかい?」
「ツナ達には断り入れてきた」
「僕は別に来てほしいだなんて言ってないけど?」
「?そりゃな。俺が来たくて来たんだし」

 本気で戸惑った顔をする雛香の返答に、雲雀の顔色が微妙に変わる。
 「あ、キョーヤ墓穴掘ったな」とディーノは思ったが、そこには敢えて触れない体で、片手の鞭を持ち直した。

「よーし。可愛い弟子が2人そろったことだし、はじめっか!」
「「さっき可愛くないって言ってた(だろ)」」
「そういうところがホント可愛くない」

 見事に声を被らせ即答する愛弟子たちに、ディーノはがっくりうなだれた。

「そーいうことはちゃっちゃと忘れろよ!」
「俺記憶力いいんで」
「僕は自分の発言に責任持たない大人から教わる事なんて何もない」
「あー、ホンットお前らって10年戻っても変わってねーな!」

 いくつになっても口がよく回る、とこめかみを押さえるディーノの前で、「「?」」とこれまたきれいに2人の弟子は、同じ表情で同じ角度に首をかしげた。





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