開匣の時
「「「「!!」」」」
突如吹き出した藍色の霧に、トレーニングルームにいた全員が驚愕する。
立ち込める暗色の煙、そしてその真ん中から――。
「!雛香っ?!」
「雲雀、」
不意に飛び出した黒い影が、
佇む雲雀へと真っ直ぐにその腕を振り下ろす。
「――俺の勝ちだ!」
宣言とともに振り下ろされる刃、
驚きに声をあげた雛乃と息を呑むツナ達、
それら全てに無表情のまま、雲雀は微塵も動きを見せず――。
ビュッ、という空を切る音とともに、
「残念だったね、宮野雛香」
あっさりトンファーで攻撃を受け止めた雲雀は、つまらなさそうに吐き捨てた。
「その程度じゃ、僕は……」
言いかけ――雲雀の表情が、凍りつく。
「……これ、は」
「え、」「へ?」
雛乃がハッと首を回す。
つられるようにして振り返ったツナ達の先、
雲雀の背後に現れる、見慣れた黒い影。
「……残念だったな、雲雀恭弥。そっちは幻覚」
吹き上がる、橙色の炎。
「今度こそ、俺の勝ちだ」
カチリ、と嵌められるリング、そして。
「――開匣!」
瞬間、咆哮が響き渡った。