君を咬み殺す3 | ナノ




歩み寄り
「……つまり」
「知るほどに謎が深まるばかりでね。匣というものは」
 床に座り込むツナの前、上空で激しくぶつかり合う2匹のハリネズミに見向きもせず、雲雀は淡々と言い放つ。
「雛香と調べていたんだけれど、今のところまだ解明できてはいない」
 外野でぽかんと雲雀とツナの戦闘を見ていた雛香は、突如名前を呼ばれ、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。え、なに急に。

「覚えておくといい。大空の炎はすべての属性の匣を開匣できるが、他属性の匣の力を完全に引き出すことはできない。……どこかの誰かは別だったけれど」
「!」

 目を見開いた周囲の真上、
 ツナが開匣したハリネズミは、雲雀のハリネズミに取り込まれ、瞬時に破壊された。

「ツナ兄のハリネズミが……!」
「悲観することはないよ。大空専用の匣も存在するらしい」

 息を呑むフゥ太やラルに背を向け、雲雀はまっすぐに歩を進める。
 未だ床に座り込む、雛香のもとへと。

「……宮野雛香」
「え、ハイ」
「君、時間あるでしょ」
「は?」
 質問ではなく断定形で投げかけられた雲雀の言葉に、雛香はぽかんと相手を見上げる。
「ちょっとおいで」
「わっ?!」
 ぐい、と突如腕を引っ張り上げられ。
 前をスタスタと行く雲雀に、雛香は慌てて後をついて歩き出した。
 というか。

(……腕放せよバカやろう……!)

 ぎゅ、と握られた腕を引っ張られる。
 前を行く黒いスーツの背中を、雛香は恨みがましく見上げた。
 その頬が赤くなっていることに、自分では気が付きもしないまま。


***




 一方。

「……嫌な予感……」

 アジトの長い廊下を、早足で進む1つの影。

「……すっっっごく嫌な予感が、する……」

 顔に縦線を何本も入れ、思いっきり眉根を寄せた雛乃は、消えた兄を探す足取りを緩めず口元を引き攣らせた。

「……なんか、こう……雲雀さんと、何かありそうな……」

 これが双子の繋がりなのか、幸か不幸か奇妙な勘を発揮させる雛乃。

「……雛香、お願いだから……っていうかついこの前まで塞ぎこんでたから、そんなの無いって思いたいんだけど……お願い、お願いだから、雲雀さんに手出されないでよ……!」

 そうして、得てしてこういう予感というのは外れないものであったりする。





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