得たものは手の内に
「恭さん、これは?!」
「球針態が……壊れる」
動揺に声をあげる草壁の前、雲雀はきゅっと唇を引き結んだ。
目の前、轟音とともにヒビ入り壊れゆく球針態。だがそれに大した関心は無い。
(雛香……!)
あの少年は、今。
***
目を開ける。
膝をつき座り込んでいる自分の前、カラン、とかすかな音ともに何かが転がった。
チカチカする目を細め、それを拾い上げる。
「……これは……」
銀色に輝くボンゴレの紋章と蛇の文様が絡みついた、奇妙な、しかし目を惹くリング。
『……これを、覚悟を持つお前に』
耳の奥、凛とした声が弾けた。
「……マイラ……」
呟き、雛香は小さなリングを握りしめた。
体が軽い。痛みも苦しみも何も感じない。ここ最近体中を蝕んでいた、『催眠』の反動による苦痛は何ひとつ残っていなかった。
本当に、彼らは浄化してくれたのだ。
幼き頃ファミリーの手により入れられた、忌まわしきあの血液を。
カツン。
ふいに聞こえた足音に、ハッと我に返る。
明るくなった視界の中、粉々になった球針態の破片が散らばる上。
ただ立ち尽くし、こちらを見つめる人影がいた。
「……ひば、」
り、と最後まで言う前に。
頬を掠める風を感じて、瞬間、息が詰まるほど強く抱きしめられていた。