君を咬み殺す3 | ナノ




得たものは手の内に
「恭さん、これは?!」
「球針態が……壊れる」
 動揺に声をあげる草壁の前、雲雀はきゅっと唇を引き結んだ。
 目の前、轟音とともにヒビ入り壊れゆく球針態。だがそれに大した関心は無い。


(雛香……!)


 あの少年は、今。


***




 目を開ける。
 膝をつき座り込んでいる自分の前、カラン、とかすかな音ともに何かが転がった。
チカチカする目を細め、それを拾い上げる。

「……これは……」

 銀色に輝くボンゴレの紋章と蛇の文様が絡みついた、奇妙な、しかし目を惹くリング。


『……これを、覚悟を持つお前に』


 耳の奥、凛とした声が弾けた。


「……マイラ……」
 呟き、雛香は小さなリングを握りしめた。
 体が軽い。痛みも苦しみも何も感じない。ここ最近体中を蝕んでいた、『催眠』の反動による苦痛は何ひとつ残っていなかった。

 本当に、彼らは浄化してくれたのだ。
 幼き頃ファミリーの手により入れられた、忌まわしきあの血液を。


 カツン。


 ふいに聞こえた足音に、ハッと我に返る。
 明るくなった視界の中、粉々になった球針態の破片が散らばる上。
 ただ立ち尽くし、こちらを見つめる人影がいた。

「……ひば、」
 り、と最後まで言う前に。

 頬を掠める風を感じて、瞬間、息が詰まるほど強く抱きしめられていた。





- ナノ -