不穏な未来
全てが真っ白に染まった世界の中で、
確かに、聞き覚えのある声が鼓膜を震わせた。
〈……デーチモ、いや、雛香〉
ゆらり、何も見えないはずの白い視界に、僅かにゆらめく、黒い姿。
〈……お前に警告しておく……ヴィーラファミリーの後継者は、代々双子で生まれることが多い〉
そうなのか、とぼんやり雛香は思った。
ならばほぼ記憶に無い父親も、きっとおそらくそうだったのだろう。どこかふわふわとあいまいな思考に、雛香は目を閉じかける。
だが、次に聞こえた言葉に、全身の血が凍りついた。
〈しかし……生き残るのは常に片方だけだ。残った方が、ボスとなる〉
え?
混乱し、雛香は息を呑む。
それならば、おかしいではないか。だって、この初代たちは、
〈初め、俺がボスとなった……だが、のちに正式にボスの座についたのは、レイラだ〉
……は?
思わず目を見張る。
明快になりゆく視界の中、黒いローブをはためかしこちらを見据えるのは、
黒い片目と白い眼帯の、対照的な瞳の色。
〈俺はジョットからリングを受け取った、そののちいくらも経たずに死を迎えた〉
口を開く。
だがなんと言っていいかわからない。
何から問えばいいのか、何を聞くべきなのか。
〈……正直、お前には酷なことをした。もともとヴィーラファミリーは闇で動くことが多かったが、2世以降ますますゆがんでいったのは、紛れもなく我が弟のせいだ〉
「……え、」
〈お前のその身を蝕む血液は、全て俺が浄化しよう〉
「……マイラ、」
息を呑む。
こちらを見据える黒い瞳はどこか悲しげで、しかし、凛とした強い眼差しをしていた。
〈匣はボンゴレの雲から受け取るがいい……俺の使っていた相棒だ、必ずお前の役に立つだろう〉
「まっ、」
〈さらばだ、雛香……お前は、どうか〉
ぶつっ。
どこか遠く、しかしすぐ側でそんな奇妙な音が聞こえ。
真っ白な世界は、次の瞬間全てが黒く塗り潰された。