君を咬み殺す3 | ナノ




不穏な未来
 全てが真っ白に染まった世界の中で、
 確かに、聞き覚えのある声が鼓膜を震わせた。

〈……デーチモ、いや、雛香〉

 ゆらり、何も見えないはずの白い視界に、僅かにゆらめく、黒い姿。

〈……お前に警告しておく……ヴィーラファミリーの後継者は、代々双子で生まれることが多い〉
 
 そうなのか、とぼんやり雛香は思った。
 ならばほぼ記憶に無い父親も、きっとおそらくそうだったのだろう。どこかふわふわとあいまいな思考に、雛香は目を閉じかける。
 だが、次に聞こえた言葉に、全身の血が凍りついた。


〈しかし……生き残るのは常に片方だけだ。残った方が、ボスとなる〉


 え?
 混乱し、雛香は息を呑む。
 それならば、おかしいではないか。だって、この初代たちは、

〈初め、俺がボスとなった……だが、のちに正式にボスの座についたのは、レイラだ〉

 ……は?
 思わず目を見張る。
 明快になりゆく視界の中、黒いローブをはためかしこちらを見据えるのは、
 黒い片目と白い眼帯の、対照的な瞳の色。

〈俺はジョットからリングを受け取った、そののちいくらも経たずに死を迎えた〉

 口を開く。
 だがなんと言っていいかわからない。
 何から問えばいいのか、何を聞くべきなのか。

〈……正直、お前には酷なことをした。もともとヴィーラファミリーは闇で動くことが多かったが、2世以降ますますゆがんでいったのは、紛れもなく我が弟のせいだ〉
「……え、」
〈お前のその身を蝕む血液は、全て俺が浄化しよう〉
「……マイラ、」

 息を呑む。
 こちらを見据える黒い瞳はどこか悲しげで、しかし、凛とした強い眼差しをしていた。

〈匣はボンゴレの雲から受け取るがいい……俺の使っていた相棒だ、必ずお前の役に立つだろう〉
「まっ、」
〈さらばだ、雛香……お前は、どうか〉

 
 ぶつっ。


 どこか遠く、しかしすぐ側でそんな奇妙な音が聞こえ。
 真っ白な世界は、次の瞬間全てが黒く塗り潰された。





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