あの子はダレ? 02



(あれ…?)



真っ暗な世界。
ああ、これは夢なんだ。たまに在るんだよね。"夢"だって解る夢が。ただ、私みたいに特殊な人間の視る夢は"いろいろ"とあるらしい。



(ここは、第二体育館?)



あの日が蘇る。ミナトが来てくれなかったら…私は。そう考えたら今でもぞっとする出来事だ。



《…ん、……さい…》

(誰かいるの?)

《…さい…ご……》

(…さいご?)



だんだんと目の前のシルエットがハッキリしてくる。女性であろうそのシルエットは見たことがある。



(…あなたは!!)



涙を止めどなく溢れさせる女性…少女はあの日の先輩だった。
大人しそうな雰囲気、肩までの黒髪ストレート、小柄でリボンの色が上級生…

異様な雰囲気に知らないうちに背中に汗が伝う。なんで?なにが?どうして?



(っ、)



手を伸ばそうとしたまま動かない私の手。その手を少女は何かを諦めたような瞳で見つめ続ける。



《…だめ》

(……な、にが?)



少女は少し視線を下げ申し訳なさそうに首を左右にふるふると振るった。



《もう…直ぐね》

(だから、何が?)

(……迎え)



ぐにゃりと歪みだした世界の真ん中で少女は立ち上がった。



《うずまきクシナ…平安とはどこに在るんだと思う?》



初めて見た時よりもスラスラ話しをする少女は自分の目をしっかり見つめ問う。



(……)

《クシナは一番それを望んでいた》

(私は、)

《クシナが立ち止まったままじゃ…私は進めないよ》

(?)

《あんまり、泣かないで》



泣いていたのはあなたでしょ?とは、思ったが何故か声にはならなかった。



《泣かしたのは……私か、》



自身を嘲笑うかのように呟かれたその声はとても弱々しかった。



(…ありがとう)



気づけば私はそう言いながら彼女を抱きしめていた。



(20110223)
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