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我が家の花園にて


「ブルーノ様、そろそろお時間で御座います」

「…コーネリアス もうそんな時間かい?」

「ええ。」


多分私のこの目に映ることない景色はもうそろそろ日が沈む頃だろう。生憎、私は視力がない。今だって包帯をしているし、もうこんな生活を17年間送ってきたから今更盲目なことを嘆く気力も無い。
ただ、38を迎えた今日この頃、とてつもなく時間がすぎるのが早くてね。 私ももう歳かな。


「…あの…ブルーノ様 ?」

「ああ、すまない。そろそろ立つよ ……ッ」

「ブルーノ様…!!」


ひしり、と体の骨が軋む音が聞こえる。
どうやら足元にあった小石に足をつまずかせたようだ。
盲目にはよくあることだ。目がなかったらろくに歩くこともままならない。脆いね本当にね。

「…いっ」

私が転ぶのと同時に私を庇ったコーネリアスから切ない声が上がる。
髪を伝う感覚は包帯が解けたのだろう。
瞼を開けると、やっぱり黒しかそこにはない。
目の前にいるはずの彼が見えない。
君はなったことあるかい?
本当に不思議な感覚なんだ。



暫くこの体制でいた。
これは私がコーネリアスに覆い被さってる感じなのかな。

「コーネリアス」

名前を呼びそこにいる彼の顔の輪郭を手で触る


随分前に、私が目が見えてるころの彼を思い出す。
たしか、私より一回りも小さくて、純粋で、でも怯えた目をしていた。14位は離れていたかな。

彼が息を飲んだのを感じる


「少し髪が伸びたんじゃないかな」

柔らかいね、君の髪は。と微笑するが彼からの返事はない。

「…どうしたんだい…?」

「いえ、 ただ」

「ただ?」

「ブルーノ様の目はいつ見ても綺麗でございます」

「ふふ。 有難う。…それにしても大きくなったね。」

彼が大きくなるのは当たり前のことなのに、何故か不思議で仕方がないんだ。私の知ってる彼はまだ幼いのに目の前の彼はもう大人で。

「ブルーノ様」

「なんだい」

「私は貴方へ永遠の忠誠を誓います」

私の髪に彼が触れて、動作からすると髪に接吻をされた。ベタだね。


「…堅苦しいね、よしてくれ。そういうのはあまり好きではないんだ」

逃げたかったらいつでもお逃げ、と小声で言うと強い力で抱きしめられる。
腰に回った決して細すぎない腕が少し震えていた。


「嫌です。」



全く、本当に困った坊やだ。

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