アクマイザー

糾弾


「最近お前は双児宮によく出かけているそうだな」

アイオロス兄さんが、食卓のパンを手に取りながら何気なく聞いてきた。
「ああ、宮も近いから」
俺も何気ない風に答える。
「心境の変化でもあったのか?以前はサガを避けていただろう」
兄さんの直球なところは、兄弟同士の会話だからという気安さもあるかもしれないが、ほとんど性格によるのだろうと思う。兄さんはサガと違って隠し事は好きではないし、言葉を余計な修飾語で飾ることもしない。
「別に避けていたわけではないさ。接する機会が少なかっただけだよ。同じ黄金聖闘士同士、仲良くしたほうがいいと兄さんだって思うだろ」
つい饒舌になってしまうのは、心のどこかで言訳をしたがっていたからかもしれない。

兄さんは少しためらうように一拍を置いてから俺に聞いた。
「サガに何かされたのか?」
「何でそう思うんだ?サガはどちらも優しいぞ」
どちらも、という部分を言外に強調する。
兄さんはサガとの過去を流し、仲良くやっているけれど、黒い方のサガとは未だに疎遠だ。というより黒のサガの方が兄さんを受け付けない。
黒のサガは頑ななまでに兄さんを拒否する。その代わりに俺を受け入れる。

兄さんが真っ直ぐに俺を見た。
「しかし、お前はあのサガといる時に楽しそうにしているが…笑っていないじゃないか」

心臓をわしづかみにされたような気がした。
それが悔しくて、俺も兄さんに言ってやった。
「笑う必要がないからな。サガはこのままの俺が好きだと言ってくれたし」
初めて兄さんの顔がこわばった。
「ベッドの中でもサガは優しかったよ」
ガタン、と兄さんがテーブルに両手を付いて椅子から立ち上がる。
へえ、兄さんでもそんな顔が出来るんだ…と、どこか他人事のような感想が胸のうちを流れる。

ごめん、兄さん。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。
そう思いながら、俺はどこか深いところで満足している自分に気が付いた。

(2008/8/27)


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