▽ 2
今から約十年前、俺がまだマフィアのボスになる少し前。
俺が二番目に好きになった人が死んだ。
いつでも笑っていて、優しくて……無邪気な女の子。
名前は桜木美桜ちゃん。
ボンゴレの桜の幹部だった。
桜の幹部は短命。
リボーンも精々長くて30歳位までは生きれるって聞いてたのに、彼女は15歳という若さで亡くなった。
名前すらわからない不治の病だった。
ボンゴレの身体検査でもその病は発見されなかったのに、体が妙な感じがすると言ったので見てもらえば謎の病に彼女は侵されていた。
それも、その日の数日前が身体検査だったから短期間でで発病したと言うことになる。
絶対に有り得ることではない。
アルコバレーノたちも何故か分からないようで、首を横に振っていたのを覚えている。
そして、彼女が死んだ命日が迫って来ている。
「10代目。これ、資料ッス」
獄寺君が部屋の扉を開けて資料を持って来てくれた。
その時、ふわりと何処からか桜の香りがした。
「今の……」
俺がその香りに気付いたと同時に、俺の目の前にいた獄寺君も俺同様に周りを見渡す。
そして、ふと窓から机に視線を移した際に俺の目に入ったのは一枚の桃色の花弁。
「……可笑しいね、この辺には桜の木はないのに」
「……そうっすね。もしかしたらアイツの悪戯かも知れません」
優しげに目を細めて笑う獄寺君。
彼も俺と同じく、彼女が好きだったんだろう。
俺は机の上の花弁を手に乗せて、獄寺君に笑いかける。
「ねえ、久しぶりに美桜ちゃんのお墓参り行かない?」
彼は一瞬呆気に取られたけど、嬉しそうに笑って扉に近付いて行く。
「いいですね!幹部の奴等とリボーンさん集めて来ます!!」
「よろしくね」
俺は獄寺君を見送ったあと、花弁を見つめる。
微かにふわりと香る臭いは彼女と同じで、そこに彼女がいたような錯覚に陥る。
「願うなら、彼女に祝福を……」
俺は、再び机の上に花弁をおいてホールに向かおうと扉に向かう。
そして、ガチャリと扉を開けた際に机に置いた花弁がそっと空へ飛んでいった。
prev /
next
しおりを挟む