▽ 14
翌日、美桜はテツヤと共に家を出た。
「忘れ物はないですよね?」
「うん!」
二人は並びながら歩きつつ、今日鞄の中に入れた必要品の名前を言っていき確認をとる。
「最後に、お弁当は?」
「持ったー!」
ニコニコしながら言う美桜に頬を緩めるテツヤ。
すると、前方からフランがやって来た。
「あっ、美桜さん。おはようございますー」
テツヤは彼が視界に入るなり完璧に表情を無くし、逆に美桜は大きく手を振った。
「おはよーフラン!」
そのまま、フランは美桜の横についた。
「……妹はやりませんよ」
「……はい?」
すると、美桜を挟んだ右隣から聞こえたテツヤの言葉に一瞬固まるフラン。
勿論、テツヤの言葉は美桜にも聞こえている訳で彼女は苦笑いだ。
落ち着きを取り戻したフランはいつもの無表情で淡々と言う。
「別に貴方が美桜さんの恋愛に口出しする必要はないと思いますー。それともなんですか?巷で有名なシスコンってやつですかー?」
フランの言葉に今度はテツヤが固まる番だ。
しかし、テツヤも再び持ち直して微笑む。
「なんとでも言うと良いですよ。僕は兄として何処の馬の骨とも分からない輩に妹を任せたくないんです。それに、美桜には恋愛は早いんですよ。カエルくん」
カエルの言葉に美桜とフランは固まる。
そして、口を出したのは美桜だった。
「てっ、テツヤ?」
「どうしましたか?」
美桜にはふんわりと笑顔を向けるテツヤ。
しかし、二人はそれどころではない。
「な、なんでフランをカエルって呼んだの……?」
すると、ぱちくりと瞬きするテツヤ。
そして、口を開いた。
「何を言うんですか。どう見てもこの男の雰囲気は怠惰したカエルでしょう?」
彼の言葉に、現マフィアと元マフィアの二人は大きく安堵の息を吐いた。
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