▽ 9
「美桜さーん」
学校を眺める私に、フランが声を掛けてきた。
「どうしたの?」
私はそちらに顔を向けた。
「ミーに着いてきてくれませんか?」
彼の目が真剣だったので私は静かに頷くと彼の後ろを付いて歩き出す。
そうして、暫くして着いたのは長い階段のある場所。
「フラン、ここって……?」
「墓地、ですよー」
珍しく目を背けた彼。
私は一度微笑んで彼の腕を掴む。
「よし、お姉さんが背中を押してあげよう!」
腕を掴んだまま階段を駆け上る私達二人。
フランは意を決したように一度目を閉じると前を歩く私の腕を引っ張りこう言う。
「そっちじゃないですよー」
くいっ腕を引かれるままに右に曲がると小さいけど綺麗な墓石が目に入った。
そして、そこに書かれている名前は予想通り前の私の名前だった。
「ふふっ、自分で自分の墓参りか」
「変な話しですけどねー」
「そうだね」
多分、墓石が綺麗なのは母たちが掃除をしてくれているからだろう。
私は人知れず涙の溜まった目元を服の袖で拭う。
「フラン」
「……すみませんでしたー」
すっと立ち上がって顔を伏せながらそういうフラン。
「いいよ……」
「少し座って落ち着きましょうか」
彼はそう言うと有幻覚で作り出したであろうベンチの上に私を座らせると、その隣でずっと私の震える背を撫でてくれた。
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