▽ 5
翌日の朝、私はフランと出掛ける約束をしていたので起きるなり早々に外出の用意を済ませて家を出た。
途中、家を出ようとする私を見てテツヤがぶつぶつと何かの呪文を言っていたが敢えてスルーしたのは悪くない。
私はふらふらと待ち合わせ場所に向かいつつ大きく欠伸をする。
そして、携帯を片手に暫く歩いていると前方に見えた待ち合わせ相手の背中。
私はその背に向けて声を放った。
「フラン!」
すると、無表情なままでこちらを向いた彼。
だがその周りにはちらほらと女の子が群がっていてどうも近寄りがたい。
「美桜さん。ヘルプミですー!」
案の定、彼が私の名前を呼ぶなりこちらに集まる女の子たちの鋭い視線。
私はそれに気づきなり迷うことなくその場で方向転換した。
「……」
その際、後ろから聞こえたのはフランからの冷たい声色での「あっ、逃げ気ですかー?」という声。
私はそれに顔だけ振り返りながら口パクでこう言った。
『駅で待ってるね』
恐らく、彼も暗殺部隊の端くれだし口読術ぐらいはできるだろう。
最悪できなかったとしても彼の頭ならば大体は予想してくれる筈だ。
私はそのまま彼に『グッドラック』と言わんばかりに親指を立てながら微笑むと、そのまま駅まで向かった。
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