打ち捨てられた夢
お題:「車」「いばら」「古い」


それは、鬱蒼と生い茂る森の中には不似合いなものだった。
いばらの巻きついた古い自転車。自然に還らない人工物。

「不法投棄だよね」

いったい誰がこんなものをこんな場所に捨てたのだろう。ちゃんとゴミ捨て場にもっていけばいいのに。
しょうがないから自分が持って行ってあげようと、自転車に近付く。と、自転車以外のものも落ちていることに気が付いた。
複雑に茨がからむ車輪やハンドルの間に、たくさんの赤と白のかけらが見える。なんとなく気になって、ボクはその中の一つに摘まみ上げた。
それは随分と痛んでいてぱっと見はなにかわからない。でも、どこかで見たもののような気がする。
ボクは目の前にかざして、まじまじとかけらを見つめた。
ちょっとカーブを描いた形。これを集めてつぎはぎしたら、丸いボールになりそうだ。それで、白と赤のツートンカラーで、素材はプラスチックみたいなもので、

「モンスターボールだ」

ようやく思い出せたのは、オーキド研究所にたくさんある、でもボクにはまだ使わせてもらえない道具だった。
ここに捨ててあるかけらは全部モンスターボールなんだろうか。

「なんで、捨てたんだろう」

自転車もモンスターボールも、ボクにとっては憧れだ。
自転車があればどこへだっていけるし、モンスターボールがあればどんなポケモンも捕まられる。
そんなすごいものを、どうして捨ててしまえるのだろう。
まだ夢を見るだけのボクには、夢を捨てる人の気持ちなんて到底理解できなかった。


お題は「三題噺スイッチ」(http://chocol.heteml.jp/soda/switch1.html)よりお借りしました。
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