観覧車の前に一つ年上の友人がいた。それはおかしなことではない。
しかし、声をかけたら、
「ねえねえ、観覧車に乗ろうよ」
と年上の友人がゆるい口調で言い放った。ハリーセンみたいな頭で目つきの悪い友人がだ。おかしい。おかしすぎる。
呆気にとられていたら、強制的に観覧車に乗せられた。
「すごいねえ」
お前誰だよ。
つっこもうと右手を上げ、また言葉を失った。
そこにはオレにポケモンを届けてくれたお姉さんがいた。
観覧車に乗るまでは、確かに年上の友人だったはずだ。いつ入れ替わった。それとも、おれの目がおかしいのか。
行き場を失った右手が宙を彷徨う。
観覧車が一周回る間、隣にいたのはずっとお姉さんだった。
観覧車から降りたら、いつの間にか隣には年上の友人がいた。
「また乗りたいねえ」
彼にはありえない間延びした口調で別れ際にそう言った。去っていく背中は、確かにハリーセン頭の友人だった。
おれは眼科に行くべきか、精神科に行くべきか。
観覧車バグのあれ。
移動中の暇潰しに書いたもの。