君に決めた
よろめきながらも海に帰っていくプルリルを眺め、緑のポケモンはふふんと勝ち誇った顔をした。けれど、足元に波が来た途端、びくっと飛び退いた。

「お前、海が嫌いになったか?」

緑のポケモンはオレを睨み付けた。
見られて恥ずかしかったんだろう。

「まあ、あんなことがあったばっかだから仕方ねえけど、あんま嫌いになってくれるなよ。オレの名前だから」

緑のポケモンは怪訝そうな顔をした。

「オレの名前、ミスミっていうんだけど、この名前には『海のように広く澄んだ心を持ってほしい』っていう、父さんの願いが込められてるんだ。だから、海はオレの名前。わかったか?」

緑のポケモンは曖昧に頷いた。
なんとなくでもわかってもらえたなら、それでいい。

凪いだ海に目をやる。
時には荒れるけれど、光を反射して輝く海はどこまでも広がり、全てのものを受け入れる。オレはこの海が好きだし、自分の名前も好きだ。だから、こいつにも好きになってもらいたい。

「なあ、お前、オレと旅をしないか?」

それは、一緒に戦っているうちに湧いた想いだった。
誇り高い赤の瞳が、見定めるかのようにじっとオレを見据える。

「オレ、お前とならなんでも出来る気がするんだ。なっ、一緒にイッシュを旅しようぜ」

緑のポケモンに手を差し出す。緑のポケモンはオレの目と手を交互に見つめた。
小さな手がオレの手に重なる。緑のポケモンはオレを見上げ、にっと笑った。
嬉しさが込み上げて、オレは緑のポケモンを抱き上げた。

「よし、これでオレ達は仲間だ!これからよろしくな!」

「タジャ」

オレの初めてのパートナーは、気の強そうな笑みを浮かべて頷いた。


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