雨の降る午後の匂いが七草に満ちている。雨音最中に蛙がゲコゲコと喉を震わせる音を聞きながら、タライの水を庭に流した。半年に一度、使い古したスパイクを磨いて洗う。重なっていた泥は戦ったフィールド全てで、こびりつくその様にいつもぼんやりと懐かしむ。


「なかなか落ちないな…」


部活がない今日、臭い落としも兼ねて洗おうと持ち帰ったはいいけど、まったくもって憂鬱だ。湿気と汗でうねった髪が顔にへばりつく。こんな時ばかりは髪を短くしてしまおうかと考える。

横髪を耳にかけてなかなか落ちない汚れに力をこめて擦る。…10秒ももたない。
ピカピカにしてやる!と、高ぶっていた気はいまや消沈の渦中だ。

一通り洗ったスパイクをタライの水に浸して、休憩しようと冷蔵庫を開けた。賞味期限が切れた牛乳を見つけて、昨日だから大丈夫だろうと、直接パックに口をつけて喉に流し込む。
さあテレビでも見ようと腰を下ろした時、リモコンの横に


から

「織田信長が…本能寺の恋…?」


通学鞄をあさって適当にとったノートを開くと、古代文字で書かれた文章がページを独占していた。

「…読めない」


あー…これはやばい、今回も神童のノート頼みかも。今神童暇かな。
そう思い手に取った携帯が神童に繋がる前に震えた。
着信先が母さんだと確認した後、通話ボタンを押すと、母さんではない知らない男の声が響いた。


「母さんが車にはねられた!?」

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