繋がれた手と手。
それが離されたのは、いつのことだったかな?
あなたは今、どこで何をしていますか?
私は今も、あなたが忘れられない。
「名前ちゃん、お座敷に」
「…分かりました」
だけど、忘れるしかない。

(花の冠 前編)

お座敷に行く途中、姉さんに話しかけられる。
「名前ええなあ、今日はええお客さんやで」
「ええお客さん…?」
「あの新選組やて!」
新選組…名だけは聞いたことある。
確か、人斬り集団だとか。
それが「ええお客さん」なの?
「行ってみたら分かるわ」
そう言うと姉さんは他のお座敷に入って行く。
私もお座敷に入る。
「失礼します、名前と申します―」
すると、そこにいたのは。
「おっ、姉ちゃん待ってたぜ!」
「酒だ酒!」
「うるせえぞ新八と左之、騒ぐんじゃねえ!」
「そうだ、副長の言うとおりだ」
思った以上に緩い…というか、人斬り集団とは思えないような人たちだった。

「騒がしくて悪いな…いつもこんな感じなんだ」
少しびっくりしていると、藍色の髪のの男の人に謝られる。
「い、いえ…慣れてますので」
すごい整った顔立ちの人だったので、そっちの方にびっくりした。
姉さんはこの顔のことを言っていたのかな…?
「総司は飲まないのか」
その人は、奥にいる人にそう話しかける。
総司…って。
…そうだ…幼いころの、あの人と同じ名前だ。
私のずっと忘れられない人。
こんな気持ちでお座敷に上がっていけないって、分かってるんだけど…
「何? 僕も飲んでるよ、一くん」
私がもやもやしていると、総司と呼ばれた人は藍色の髪の人の隣に来る。
その顔は、

『名前ちゃん』
あの人と似てる。
―いや、違う。
「総…ちゃん…」
似ているんじゃない。
「…名前ちゃん…?」
本物の、総ちゃんなんだ。

彼も私の名前も呟き、私は本当の総ちゃんだということを確認する。
まさか…総ちゃんと、お座敷で再会するなんて。
「なんだ…? お前たちは知り合いなのか?」
「知り合いと…いうか、」
総ちゃんは何も言わなくて、どうしてもこの場に居づらくなってしまう。
「もう酒がねえぞ!」
「新ぱっつぁん飲みすぎ!」
「あ…私、持ってきますよ、」
するとそこで丁度良くお酒が無くなったらしく、私は取ってくることにする。
「名前ちゃん…」
総ちゃんが小さく私を呼んだ気がしたが、私は振り返らず、お座敷を後にした。

今更…総ちゃんに合わせる顔がなかった。
だって私は、島原に売られた女なんだから。




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