読んでいた本から目を上げ、俺は窓際を見る。
そこには1人の男と、たくさんの女。
「…はあ」
ー俺の友達は遊んでいる。
来た者拒まず去る者追わず、女なら全員OK。
「……はあ……」
本当は怒りたいところだが、俺はあいつに何も言えない。
ーあいつは中学生のとき、彼女を事故で亡くしているのだから。


中学2年生のとき、総司に彼女が出来た。
相手は俺の幼なじみである名前。
名前が総司に告白し、総司も名前が好きだったため、すぐ付き合うことになった。
総司はとても幸せそうで、また名前も幸せそうで…
俺は素直に2人を祝福していた。
ーだが。
名前は、死んだ。
総司とのデート中に、スリップした車に突っ込まれて。
総司の目の前で…即死だった。
みんなが泣いていた。
俺も、名前は小さい頃から一緒だった幼なじみだから、涙も出た。
ーけど、総司は泣かなかった。
無表情に、冷たくなった彼女を見つめていた。
「僕は…名前を守れなかった」
怖いとさえ思った。
最愛の彼女が死んだのに、総司は泣かない。
「総、司…」
俺は、総司に何も言えなかった。


それから、総司は女と遊ぶようになった。
彼女を振り切るみたいに、忘れるように。
「総司、」
「…何?」
総司の微笑みは冷たい。
笑っているのに、笑っていない。
「土方さんが…呼んでいた」
「ええ? 断っておいてよ。 僕、用事があるから」
その用事というのも、女との約束なんだろう。
「ダメだ。 早く行け」
「無理だってば。 ほら、もうみんな来ちゃってるもん」
総司が廊下にいる女に微笑みかける。
…俺にとっては、その微笑みも嘘にしか見えない。
「じゃあ、よろしくね」
総司の本当の心は、どこにあるんだ?


ーその夜、夢を見た。
『はじめ!』
名前が出てきた。
『あのね、私ね、総司くんと付き合うことになったの!』
名前が嬉しそう微笑む。
『よかったな』
『うん! はじめのおかげだよ。 ありがとう!』
本当に、嬉しそうだった。
『…ねえ、はじめ』
けれどすぐにその表情を崩し、
『私がいなくなったら、総司くんをよろしくね』
寂しそうに、そう笑った。
ー私は総司くんといれて、幸せだったよ。




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