「…どうしてあんな夢を…」
あの夢のおかげで、今日はどうにも気分が優れない。
…総司ばかりが気になってしまう。
『私は総司くんといれて、幸せだったよ』
あれは、どういうことなんだろうか?
…今日、総司は学校を休んでいるからな…
(どうすればいいものか…)
そうしてふと携帯を見ると、日付はー
「あ…今日は、名前の…!」
そう。
今日は名前の三周忌だった。


ー放課後、俺はすぐに墓地へと向かった。
「…久しぶり、だな」
名前に会いにきた。
少しだけど、花も買って…
「家族は来たみたいだな。 綺麗になってる…」
…少し話したら帰るか。
そうして目を閉じたときだった。
(歩く音…誰か、来て…?)
片目を開けて見ると。
「ーえ、」
そこにいたのは、総司だった。
総司も俺を見て、驚いた顔をしている。
「はじめくん…」
その片手には、
「ひまわり…!」
総司ーそして彼女の好きな花が握られていた。
しかし総司は俺を見て、また心にもなく笑う。
「ちょっと来ただけだから。 どうせまた用事あるし」
こいつー名前の三周忌なのに、また女と遊ぶつもりなのか?
「…ふざけるな!」
俺は、総司を殴った。
思いっきり、今までの思いをぶつけるように。
「お前がそんなんで、名前はどうなるんだ。 お前が名前を忘れたら…名前は…!」
思いが一気にこみ上げ、止まらなくなる。
ーすると総司は。
「…はじめくんは騙せないよね」
頬をさすりつつ、微笑む。
ー久しぶりに見た、本当の微笑みだった。

「名前、久しぶり」
ひまわりをさしながら、総司が言う。
「今まで…来てあげられなくてごめん」
ということは…今日、初めて来たのか?
「3年だってさ、早いよね。 …名前と一緒にいた日々が、昨日みたいに感じるよ」
総司は墓を真っ直ぐに見つめ、言った。
「僕は名前を守れなかった」
それは、3年前と同じ台詞。
だが、
「一緒にいたのに…名前だけが…っ!」
頬には涙が流れていた。
「何度も名前を忘れようと思った。 たくさんの女の子と遊べば忘れられるんじゃないか、って思った」
総司の悲痛な叫びが静かな墓地に響く。
「だけど、忘れられる訳なんてなかった。 僕は、名前が死んだってことから逃げてただけなんだー…!」
俺はそんな総司をただ見つめて、考えていた。
「僕は自分が許せない。 名前を、守れなかった自分が…」
ちゃんと言えるんじゃないか。
総司はまだ、名前が好きなんだ。
「僕は…っ、」
「まだ、名前が好きなんだろう?」
俺が言うと。
総司はやっと、顔を上げた。
「名前は、お前といて幸せそうだったよ。 だからお前は…そんなに自分を責めるんじゃない」
そんなの、名前が悲しむだけだ。
「ー…っ!」
総司は、泣き崩れた。
名前の墓前で、ずっと、「ごめん」と呟いている。
俺はそんな総司を見て、静かに墓場を後にしたー

想うほど、好きだから

離れても、想いは消えない。
「名前ー」
総司は、お前を想い続けるだろう。
…いつかどこかで、幸せになってくれ。




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