▽ 学年末
-学年末-
私は今返ってきたばかりの成績表を握りしめる。
…勝てなかった。
更に下位になることはなかったけど、結局私は2位。
今回で2年のテストは終わり。
斎藤に、1回も勝てなかった。
悔しくて、それに―
この微妙な想いは、何?
「また俺の勝ちだな、苗字」
「斎藤…」
「勝った方は命令できる、だよな?」
ああ、そんな約束をしたんだっけか。
私、何を命令されるんだ?
そう言って斎藤を見ていると―
「…また来年も、俺と勝負してほしい」
口から出たのは、思いもよらない言葉だった。
「…は…?」
「1年間、楽しかった…俺がずっと1位だったのも、お前がいたからだ」
「さいと―」
「俺はお前が好きだ…俺と、付き合ってくれ」
―何、それ。
「…命令は1つだけだよ」
「告白は命令ではないが」
…そんなこと、わかってるけど…
だって、斎藤が私を好きなんて。
そんなの―
「斎藤、私も―」
「ストップだ」
私が言おうとすると、斎藤がその言葉を止める。
私が首をかしげると、斎藤は言った。
「告白の返事は―お前が俺に勝てたらでいい」
…は?
「…ずっと言えないじゃん」
「お前が俺に勝てばいいんだ…ただし、俺は自分からは負けないからな」
「そんなの…」
知ってるよ。
私が言うと、斎藤は微笑む。
「お前が勝つのを待っている。
この1年間。
斎藤と勝負していて、分かったことがあった。
私は―斎藤が好きなんだ。
ガタッと音をたてて立ち上がり、私は斎藤を指さす。
「斎藤―私はお前に絶対勝つ!」
これからも私と彼の試験戦争は、続いていく。
END
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