幼なじみの関係って。 ----------------------------------------------------------------------------- 私と平助は幼なじみ同士。 家が隣で生まれた時から一緒だし、親たちも仲が良い。 クラスもずっと一緒で、いわゆる腐れ縁ってやつだ。 ―だから、平助に恋愛感情なんてない。 ずっとそう思っていた。 「苗字さんと藤堂くんって付き合ってるの!?」 「え? 付き合…は!? なんで!?」 「だっていつも一緒にいるし、仲良いから…」 いつも一緒、なんて私たちにとっては普通だった。 「ないない! ただの腐れ縁の幼なじみだから!」 「え、そうなの?」 けどみんなにとって、高2になっても一緒にいるのは普通じゃないらしい。 「よかったー!」 ―幼なじみの関係、ってなんなんだろう。 「名前ー! 帰ろうぜ!」 その日の部活後。 いつもなら平助と一緒に帰っているのだが― 「ごめん、用じあるからっ!」 と、私は逃げてしまった。 「? どうしたんだ、あいつ…」 …ほんと、どうしちゃったんだろう私。 家に着くとすぐにベッドに転がり、考え事をする。 あのこと話してから、なんか平助と話しにくい。 ―好きだけど、恋愛感情ではない。 お互いそうだ。 「幼なじみって…」 難しい。 「ねえ千鶴、幼なじみって何?」 「ストーカーかな」 「あ、ごめん聞く人間違えたわ」 千鶴の幼なじみは金髪ストーカー鬼だったか… 「何? どうしたの急に」 「いやあ、なんかもう幼なじみってのが分かんなくなってきて…千鶴って風間のこと好き?」 「ストーカーじゃなければ好きかな」 「それって恋愛感情なの?」 「へ!?」 あれ? 一気に顔が赤くなった。 「名前に言ってなかったっけ…!? でも今更言うのは恥ずかしいし…!」 なんかブツブツ言いだしたし。 やっぱ千鶴にこの質問はダメだったか? そう考えていると、 「名前! 言ってなかったことがあったから言うね!」 「うお!? びっくりしたー! 何!?」 「私、スト…千景が好きなの!」 千鶴は更に顔を赤くして言った。 …はい? 「千景って…ストーカ? 金髪鬼のこと?」 「…うん」 ってことは、 「えええええ!?」 千鶴の風間へ対する好きは、幼なじみへの好きじゃないんだ。 それからも平助を避ける日々が続いた。 そして― 「…え」 この間のあの子が平助に告白したということを聞いた。 ああ…付き合ってるのか、って聞いてきたのはそのためだったのか。 「…ん…?」 なんだろう、この胸の痛みは。 どうして、気になって仕方ないんだろう。 どうして― 「へいすけ…」 会いたくてたまらないんだろう。 私は隣の藤堂家に向かうために立ちあがった。 → Back |