幼なじみの関係って。 ----------------------------------------------------------------------------- -藤堂平助- なんだか最近、名前に避けられている。 それは俺だけじゃなく、周りのやつらにも気付かれるくらいだった。 「何? 名前ちゃんと喧嘩したわけ?」 「してねえよ! ほんと何もないんだって!」 「えー? 襲っちゃったりしたんじゃないの?」 「襲…は、はあ!? 何言ってんだよ! あいつは幼なじみだぞ!? ありえないだろ!」 俺が言うと、総司はニヤリと笑う。 「幼なじみかどうかなんて関係ないよ。 好きは好きなんだから」 俺はこの言葉の意味がよく分からなかった。 「好きってなんなんだ?」 幼なじみの好きと、恋人とかへの好きが違うのは分かる。 だけど、どちらもどういう好きなのかが分からない。 「ああーもう! 返事どうすればいいんだよ!」 ―そう。 俺は今日、女の子に告白されてしまったのだ。 「思わず保留にしちまったけど…」 『お試しでもいいから』と言われ、思わず心が揺らいだ。 だけどそのとき頭に浮かんだのは、 ―名前の顔だった。 なんでなのかは分からない。 だけど、確かに俺は今でも名前のことが頭から離れていなかった。 「あー…もー…」 告白の返事は決まんねえし、宿題は進まねえし… そう頭を掻いたそのとき。 「平助っ!」 バンッとドアが開き、そこにいたのは― 「名前!?」 息を切らした名前だった。 「え、ちょ、なんだいきなり―」 「ねえ、平助」 真面目に話しだそうとする名前に、俺は言葉を止める。 「私、幼なじみの関係がよく分かんない」 …は? 「平助のことは好きだけど、恋愛対象の好きじゃない。 今でもそう思ってる」 「おう…」 「だけど、」 名前は一呼吸置くと、 「だけどね、平助が誰かと付き合うのは嫌なの…!」 今にも泣きそうな目をして言った。 「平助は、私のこと好き?」 「お、おう…」 「けどそれって、恋愛対象としての好きなの?」 …面と向かってそう聞かれると、 「分かんねえ…」 俺もこんがらがっちまう。 「じゃあ、私が誰かと付き合うことになったら?」 名前が誰かと…例えば総司とか、一くんとかでも… 「それは嫌だ」 俺は逸らし続けていた名前の目を真っすぐと見た。 「…分かんないよね、幼なじみの関係って」 「おう…だから、提案があるんだけど」 「提案?」 「お互い好きの意味が分かるまで…今まで通り、一緒にいようぜ」 俺の提案に一瞬驚いたあと、名前はニコリと笑って頷いた。 幼なじみの関係って難しい。 だけど、いつか分かる日が来る。 ―その日まで、俺たちは幼なじみのままで。 NEXT あとがき ← → Back |