忘れられた約束
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『総ちゃん、また会おうね!』
『うん』
『私のこと、忘れないでね』
『何言ってるの? 忘れるわけないでしょ』
『ほんと!? じゃあ―』
約束だよ。

僕には今気になっている子がいる。
その気になってる子とは、
「げっ、沖田!」
1つ年下の後輩で剣道部のマネージャーである苗字 名前ちゃんだ。
「寄るな! あっちいけ!」
後輩…なのだが。
「相変わらずだね、名前ちゃん」
「名前で呼ぶな!」
口は悪いしタメ口だし呼び捨てだし。
「可愛くないなあ…」
「じゃあ近づいてくんなバカ!」
そう捨てゼリフを吐き、名前ちゃんは翻って歩いて行く。
僕はため息をつきつつ、名前ちゃんの後ろ姿を見つめる。
…可愛くないなんて、嘘。
僕には君しか可愛くないんだけど。

「今日も逃げられちゃった」
笑顔で報告すると、呆れ顔になる一くんと平助。
「懲りねえなあ、総司…」
「だってあの反応が面白いんだもん」
「何故総司にだけああなのだろうか…」
それは僕もいつも思っている。
同じ剣道部のみんなには後輩として対応するのに、僕にだけあんな態度。
…逆に僕に気があるんじゃないかと思ってしまう。
「俺達には普通なのにな…」
「普通? 普通って馬鹿とか寄るなとか言われること?」
「お前の普通は間違っている」
僕にとってはもう普通なんだけど。
「苗字ってなんで総司のこと嫌いなんだろうなー」
そんなの僕が知りたいよ。

放課後。
「ふあ…眠い…」
僕は1人で剣道場へと向かっていた。
ちなみに一くんは委員会で平助は補習。
1人で行くのも久しぶりかも。
「…あれ?」
そう思いながら歩いていると、前に見慣れた後ろ姿が。
「名前ちゃん?」
うん、あの姿は確かに名前ちゃんだ。
「おーい、名前ちゃーん」
大きな声を出して近づくと、いかにも嫌そうな顔をする名前ちゃん。
「沖田…なんで1人なんだよ」
「一くんは委員会で平助は補習」
「ちっ…」
え、何この子。先輩の僕に対して舌打ちしたんだけど。
「名前ちゃんってさあ…僕のこと嫌いなの?」
着替え終わった僕は、まだ誰もいない道場で距離を置いて喋りかけた。
「…嫌いではない」
「じゃあなんでこーんな態度なわけ?」
「それは…っ!」
名前ちゃんが突然立ち上がる。
「…え、何? どうしたの?」
僕が言うと、名前ちゃんは我に返ったように僕を睨む。
「なんでもない。 ただ…」
やっぱり、お前のことは嫌いだ。
そう言うと、名前ちゃんは道場を出て行った。



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