タタタターン♪タタタターン♪
鮮やかなステンドグラスが初夏の日光をまとい、正面には大きな十字架。
カラーン♪カラーン♪と響く鐘の音は耳に心地良い。
神父さんの言葉に自然と背筋がのびた。
「沖田名前、あなたは沖田総司の妻となり、生涯愛し続けると誓いますか?」
『誓います』
ブーケをぎゅっと握りしめながら、胸にじんわり温もりが広がっていくのがわかる。
あと少しで…私たちは本当の夫婦だ。
「沖田総司、あなたは沖田名前を妻に迎え、生涯愛し続けると誓いますか?」
どきどき。心臓が音をたてた。
これで私たちは永遠の愛を……
「誓いません」
ん?今一瞬、空耳がしたような…
「私の聞き間違えかな?沖田総司、あなたは沖田名前を妻に迎え、生涯愛し続けると…」
「誓いません」
私は何かの間違いではないかと、隣の旦那様の顔を覗き込んだ。
しかし、彼はにっこりと意地悪な笑みを浮かべて
「名前と永遠の愛なんて誓うわけないじゃない」
そう言い残し、結婚指輪をぽーんと放り投げて教会の扉に向かって歩き出した。
嘘、だよね。何かの間違いだよね……
『ね、待って総司!どういうこと?ねぇ!!』
重いウエディングドレスを引きずりながら、私は総司に向かって手を伸ばした。
でも彼は後ろ向きに手を振って、どんどん遠くに吸い込まれていく。
私の声もむなしく、渦を巻きながら総司は暗闇に消えようとしていた。
『総司!総司!!総司―!!』
「なに?呼んだ?」
タキシードを着た総司よりも現実味のある声がして、はっと目を開ける。
「夢の中で何してたの?」
上から私の顔を見下ろすジャージ姿の総司は、タキシード姿の総司とは違い、優しげな笑みを見せた。
外からは鐘の音ではなくスズメがちゅんちゅん鳴いている。
『朝か…』
私はあの結婚式が現実ではないとようやく理解し、ほっと胸をなでおろした。
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