**苗字 名前**
「返事…考えてきてくれたの?」
「う、うん…」
昨日、総司から告白されて。次の日のお昼休み。
私は、総司を屋上に呼び出していた。
どうして総司を呼び出したかって言えば、もちろんこれから私はどうするのかを伝えるために。
「私…総司とは付き合えない。…今のまま一君の彼女でいる」
「……そっか」
昨日、あれからずっとずっと考えてた。
私はどっちのことが好きなんだろうって。
だけど考えても考えても答えは全然出て来なくって。だから、初めに告白してくれた一君と付き合っていることが無難なのかなって…
そう考えたの。
「……気持ちは嬉しかったよ」
「いいよ、そういう言葉は。だって僕諦めないから。何年片想いしてきたと思ってるの」
「……ごめんね」
「ごめんは禁句。振る時の常識でしょ」
「そ、そうだよね」
幼なじみだから分かるんだ。
いま、本当に総司は悲しんでいるんだってこと。
いつも考えていることを気取られないようにと、笑顔の仮面を被っている総司だけど。
何年も一緒にいた私が、その仮面の下の顔を読み取ることなんて容易だった。
総司のそんな顔を見て、私の胸はキュッと絞めつけられたように痛んむ。
自分で決めたことなのに、いざ言葉にして見るとぐらぐらと決心が揺らぎそうになっていて。
「じゃあ、僕は先に教室戻ってるから」
「あ、総司……」
「ん?」
「な、なんでも…ない」
私に背中を向けた総司の後ろ姿が切なくて。私は無意識に総司を呼び止めてしまっていた。
だけどその先に言葉なんて用意してないのだから、当然、私は何もいうことができなくて…
「なんでもないならいいけど。じゃ、また後でね」
あなたの背中を見ていることしかできなかった――
(しのぶれど,後編)
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