**斎藤一**






「苗字、あんたが分からないと言っていたこの問題なのだが……」

「……」

「苗字?」

「へ?あっ、ごめん!私ちょっとボーっとしてたみたい…」




最近、苗字の様子がおかしい。

具体的にいつからなのだと問われれば、総司が苗字に告白したあの時期からと言って間違いはないだろう。

あれから2週間は経っているのだが、日に日に苗字は心ここに在らずといった時間が増えてきているように思う。





いや、大方の予想はついているのだ。

最近、総司が全くと言っていいほどに苗字に関わってこなくなったことが気に掛っているのだろう。





「あんたは…総司からの告白を断ったのか?」

「へ?あ、うん……っていうか、なんで私が告白されたこと知ってるの?」

「総司から、あんたに告白するということを聞かされていた。黙っていてすまない」

「う、ううん、それは全然いいんだけど…」

「総司のことが気に掛っているのか」

「そ、そんなんじゃないよ…。私が選んだのは一君だもの」

「そうか……」






苗字、あんたは気が付いているのだろうか。

今、ものすごく寂しそうな表情をしているということ。

自分の好いている女が、自分を選んでくれたということは確かに喜ばしいことだ。

だが、今の苗字の表情を見て、俺は苗字が自分を選んでくれたことを素直に喜ぶことができない。





それに…見ていて分かった。




苗字は総司のことが、恐らく好きなのだろう。







「苗字、今日は一緒に帰らないか。今日は部活が休みゆえ、あんたとゆっくり話がしたいと…思ってだな」

「今日?うん、いいよ!」




俺に余計な心配をさせまいと思っているのか、急に明るく振る舞う苗字の笑顔が、逆に俺の心を締め付けた。

の苗字気持ちに甘えて、このまま苗字の彼氏というポジションに収まっていて、本当にいいのだろうか。





好きな女の幸せを願うことが、正しい男の在り方ではないのか。




苗字がどんな思いで俺を選んでくれたのかは分からぬ。

だが、今の苗字のように、気持ちがきちんと俺に向いてくれていない状態で一緒にいても辛いだけだ。






俺にしても


苗字にしても























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