「もしも僕と付き合ってくれる気があるならキス。付き合う気がないなら抱擁。これでどうかな?」
「なっ!付き合うって一体…」
総司が出してきた提案に、私を含めたその場の全員が怪訝な顔をしました。
それにしても付き合うってどういうことですかね、沖田氏!!
すぐそこの近所のコンビニにでも付き合えって言うんですか?
いや、それはそれで、コンビニに付き合ってくれるならキスしてっておかしいよね!!!
うん、私ったら馬鹿☆
「もちろん僕と恋人になるって意味でだよ。どうする?」
「こ、恋人?!私が総司と?!」
恋人だなんて、なんて素敵な…じゃなくて!!
なんて大人すぎる響きだろう!!
もう大学生になって3年経つっていうのに、私ってこんな性格だから男友達は多くても恋人は今まで一人もいたことがなかったんだよね!!
「んなもん、迷わず抱擁だろ!」
「名前!総司に気使わなくていいからな!」
「そ、そうだ。総司はきっとあんたをからかっているだけだ」
「いい加減にしねーか、総司」
皆さんの声を聞きながら、私は総司に近寄りました。
そうだよね、普通に抱擁すればいいんだもんね!!
だって私、総司のこと好きでもなんでも…
座ったまま余裕そうな表情でにこにこしてる総司の前で私は膝をついた。
なんで総司っていっつも余裕なんだろう。
これって一応告白されてるんだよね?
そのまま私は総司を抱擁しようと手を…
そのまま手を伸ばして…
ちゅっ
「「「「な、なに?!?!?!?!」」」」
あれ、なんか唇にあったかくて柔らかい感触。
これってなんだろう。
あれ、なんか総司の顔近すぎじゃない?
って…
「どわ!!!!」
「あはは、嬉しいなあ。皆ごめんね、僕オッケーもらったみたい!」
ど、どどどどど、どうしましょう!!!
思考回路が追いつきません!!!
左脳応答せよ!!応答せよ!!
「名前…総司が好きだったなんて聞いてねーぞ」
「平助、男は諦めも肝心だ」
「名前が自分で決めたことなら、不本意ながらも認めざる得まい…くっ」
「………総司が好きだとは意外だったな」
皆の言葉で私はだんだんと状況を理解してきました。
最初は総司に無理やりキスされたのかって思ってしまったけど、どうやら私から無意識のうちに総司にキスしてしまったようです!
って、なんでなんでなんで?!?!?!
「これからよろしくね、名前ちゃん♪」
「ひゃあ!!!」
私は自分で自分が分からないまま総司に抱擁されてしまいました!
私は本当にそれでいいのかって自分自身に問いかけてみる、自問自答自問自答!!
でも、考えれば考えるほどなんだか自分の気持ちが分からなくなって…
そんな中でも総司の腕の中はあったかくて…心地よくて…
「よ、よろしくお願いします…」
気付いたらそう返事しちゃってました。
「あぁ、なんだか夢みたいだなぁ。こういうことって言ってみるもんだなぁって感じ」
「私もどうしてキスしちゃってたのやら…」
「それが名前ちゃんの本心だからじゃない?」
「むぅ……」
総司の言葉に私は何も言い返せません!!
こんな形で始まった私と総司の恋人関係。
始まりがこんなグダグダなんていいのかなって思わなくもないけど…
っていうか、かなり思うんだけど!!
でも、きっとそれでもいいんだよね!!
だって総司に抱っこされて幸せに感じちゃってる自分がいるんだもん。
END
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