16
まさか、俺は…
-彼女と猫と-
ある日の巡察帰り。
「……………」
通りかかると、縁側には苗字が寝ていた。
「おい、苗字…」
そう俺が起こそうとすると、「にゃーん」という鳴き声が聞こえる。
「…猫か?」
すると猫は苗字の横からするりと現れた。
子猫のようで、まだ小さい。
「にゃーん…」
「お、おい」
猫は俺に近づいてきた。
「お前はどこの猫だ?」
抱きかかえると、猫は嬉しそうに「にゃーん」と鳴いた。
…通じるわけないか。
猫を抱えたまま座るとここは暖かく、俺にも眠気が襲ってきた。
「……ん…」
俺はそのまま眠ってしまった。
「…はっ」
俺は眠い目をこすって起き上がる。
すると隣りにはまだ寝ている苗字、そして膝の上には猫が乗っていた。
「しまった…俺も寝てしまったのか…」
「にゃーん」
「苗字は…まだ起きないのか」
こんなところで器用に寝ているものだ。
「…苗字」
俺は呟くと微笑んだ。
「…一くんってさあ、名前ちゃんのこと好きなの?」
俺としたことが後ろのやつに気付かずに。
「そっ…総司!」
「前々から思ってたんだけどさ、絶対そうだよね」
「そんなわけ、ないだろう」
「いや? だって一くんが名前ちゃんと喋ってるときっていつも笑顔だし」
「………!?」
いつも…笑顔、だと?
「じゃあ頑張ってね、応援してるよ」
「お、おい、総司…っ!」
「素直になりなよ」
俺の制止も聞かず、総司は自分の部屋に戻って行った。
…まさか俺は、苗字を…?
気付いた理由は、彼女と猫と総司だった。
← → Back