08
運動音痴ではない…と思うんだけど。
-剣道音痴-
ある日、私がいつものように新選組に来てみると、幹部はみんないなかった。
「どこ行ったんだ…?」
歩き回っていると、ある方からみんなの声が聞こえた。
「…ここって」
それは道場だった。
「あ、名前ちゃんだー」
「沖田…」
そこにはうっすらと汗をかいている沖田をはじめ、幹部全員がいた。
「暇だったからね、久しぶりにみんなで剣道しようかってことになって」
「言いだしたのは総司だろう」
「そう言ってる一くんも楽しそうだけど」
うん、笑ってる。
「…久しぶりに土方さんと戦って嬉しかったからな」
「僕も近藤さんとできて嬉しかった」
ふうん、いつもあんな感じの斎藤と沖田がニコニコしてるなんて…恐るべし剣道だ。
「名前ちゃんって剣道できる?」
「…やったことない」
「そうか、では俺と戦おう」
「ちょっと待って今の流れおかしくない?」
「名前ちゃん対一くんかー、互角かな?」
「待って! 私やったことないっつってんじゃん! なんで斎藤と互角なの!?」
私の叫びを無視し、2人は道具を渡してきた。
本当に初めてなんですけど…できるかな?
「来い!」
斎藤は構えてるし…とりあえずやってみるか。
斎藤に襲いかかろうと(?)走り出したそのとき―
びたんっ
私はそんな音を立ててすっころんだ。
「…え」
「お、おい、苗字…?」
「…痛い」
「名前ちゃん、大丈夫…?」
「生きてるか…?」
斎藤はともかく沖田にすら心配されてるんだけど…一体どんな転び方したの私。
「…もう剣道なんか一生しない」
私がそう言うと、2人は苦笑いしていた。
足は早いんだけどなあ。
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