▼ 落つか白椿 別展開
「スモーカーさ、……っう」
「……!」
驚いた。がばと跳ね起きようとしたナマエが体勢を崩し、そのままおれの腕の中に転がり込んできたからだった。受け止めることは容易かったが、お世辞にも望ましい状況とは言えそうにない。
首筋にナマエの頬が押し付けられ、柔らかな毛先に鎖骨の辺りを覆われた。ナマエの拍動が肌へ直に伝わる。柔らかい。殴られたかのような刺激に脳髄が痺れている。どこもかしこも柔らかい。芳しい汗の匂いに眩暈する。上半身に擦れるナマエの服の肌触りと、その内側にある肉の感触さえ認識してしまい、込み上げる衝動を抑え込もうとして、深く息を吸い込んだ。
抱き締める訳にも、無理矢理突き放す訳にもいかず、そのままナマエが離れるのを待った。こいつのことだ、どうせ正気に戻れば、顔をこれでもかと赤くしながらやんやと喚き出すに決まっている。その筈、なのだが。
「な、」
衣摺れの音がして、首に腕を回された。ナマエがおれの肩に顔を埋める。縋るように抱き締められた。おれの望んでいた通りの柔らかさだった。そっと触れる。ナマエは拒絶しない。彼女の腰に腕を回す。おれの手を受け入れた、薄い背中は震えていた。
「スモーカー、さん」
耳元で滲むのは、蚊の鳴くような声だった。らしくない、しおらしすぎる。まだ寝惚けてるのか。風邪でも引いたんじゃねえのか。返すべき悪態が脳内を廻る。
(若干スモーカーが気持ち悪いのと夢主があざとくなったので削除した部分)
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