▼ 髪の毛の話
「お前少し、髪が伸びたか」
「んー……ああ、そうですね、そろそろ切っていいかもしれないです」
「伸ばしたりはしねェのか」
「まあ、鬱陶しいですし。あ、もしかしてスモーカーさんはロングのがお好きですか」
「いや、特に拘りはねェ」
「つまらん人ですねえ」
「なら聞くが、おれが長い方が良いつったらお前は切らねェのか?」
「いや、切りますよ」
「だろうな」
「そう言うスモーカーさんも、ちょっと髪伸びたんじゃないですか」
と、無遠慮に手を伸ばして彼の前髪に触れた。不意を打たれたのかスモーカーさんは一瞬瞠目し、ほんのわずかに身を硬くする。……意外な反応をされてしまった。止められなかったので嫌だったと言うわけでもないのだろうが、流石に急だったか。
「……少しな」
とはいえそう短く告げたスモーカーさんはしれっとしたもので、やはり彼の警戒心が働いただけだったようだと思い直す。いちいち何を改まってるんだと言う話だが、わたしからスモーカーさんを触ることってのは実はそうそうないので新鮮なのだ。まあ向こうからはわりと軽率にくるのだが。
「わたしの考えではですね、スモーカーさんはガッと刈り上げてこう、髪を撫で付けてやるといい感じに若頭みたいになると思うんですが」
「……」
「うーん、ちょっと怖すぎるので必要に迫られない限りはやんないほうがよさそうですね。柄の悪い部下を束ねるには最適ですけど」
「…………」
「というかあれですね、スモーカーさんの髪質も結構やらかいですね。普段頭上0.5メートルの高さにあるもんだから気づいてませんでした」
「ナマエ」
「ん? はい」
(逸材のあの子回で使用しようとした会話。いずれ使うかもしれない話ですがとりあえずここへ)
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