「どや、おるか?」
「いや、多分こっちには居ねぇ…」
「そーか……ほな、さっさと行くで」



3階、情報室前。そこには今吉、青峰、桜井、小堀、福井がいた。彼らが割り当てられた探索場所は3階特別教室。端から探していこうという福井の提案により、校舎の1番端に位置する情報室に来ていた。辺りを見回し、卒業生が来ないかを青峰が確認し、それに応じた今吉が情報室の扉を開けた。



1面に広がるコンピューター。どれもデスクトップパソコンらしく、よくよく見れば最新型の物ばかりである。試しに教室内の電気をつけてみるが、案の定カチカチと音を立てるだけで全く明かりがつく様子はない。桜井がシャ、と下ろされていたブラインドの中の1つを上げるが、窓の外は塗り潰されたように広がる黒。そして闇。どこまでも続いていそうだった。



「……窓は開くんだな……意味わかんねぇ」
「地面らしきもんも見えへんしなぁ……」
「なぁ、ちょっと何か投げてみようぜ?」
「正気か青峰……」
「確かめるだけだ、別にいーだろ」



ガラッと窓を開けて、手近にあったキャップがしまったボールペンを青峰は放る。青峰が放ったボールペンはそのまま円を描いて飛んでいき、黒に飲まれて直ぐに見えなくなった。



「……何や音はせぇへんなぁ」
「ち、つまんねぇ」
「まぁ3階にいたら聞こえないだろうな」



さっさと探して次の場所行こうぜ、と福井が皆を急かす。と言ってもデスクトップパソコンは持ち出せる訳でもないし、それ以外に調べることは何も無いのだが。



「パソコンの電源はつかないんですね……」
「それパソコンの意味あらへんやないか」
「スイマセン!スイマセン!」



情報室だというのに、肝心のパソコンの電源がつかないのでは意味がない。他に何かないのか……と見回せば、ホワイトボードの前に置かれた机の上の左側に鎮座している黒い物体。何だ?とよくよく見てみれば、それは持ち運びできる大きさの黒いノートパソコン。試しに電源ボタンを押すと、画面に「ようこそ」の文字が浮かび上がった。



「お、ついた!」
「何でこのノートパソコンだけ…?」



パスワードの入力などは必要無く、そのままデスクトップが表示される。しかし、おかしなことにデスクトップにはアイコンが一つもない。WordやExcel、設定やゴミ箱など、本来ならあるべきはずのアイコンが全くないのだ。メニュー画面を開いても然り。皆は顔を見合わせた。



「どないせーっちゅうねん」
「このパソコン、有線じゃないな……無線LANか」
「情報室からの持ち出しは可能……ってことか……」



このノートパソコンをどうするか決めあぐねていると、唐突にそのパソコンからピロン♪と場違いな音がした。何だ何だと画面を覗き込めば、「新着メール1件」の文字。



福井が恐る恐る、とマウスを操作して「開く」ボタンを押せば、突然開かれたのはWord文書。どうやらメールを開くと連動して開かれるようだった。



そこにはなにやら表のような物が書かれていた。その表には、名前、生徒番号、状態、装備、所持アイテムなどの項目がある。1から順に見ていけば、青峰、赤司、伊月、今吉、岡村……と続いており、名前の脇にレベルが記されていた。また、は欄外には残りの卒業生の人数や校則違反を犯した在校生の情報も書かれている。



「『青峰大輝(2601)/Lv.1/装備:鉄パイプ/状態:普通/アイテム:無し』……んだよこれ」
「お、見てみぃ。これ、藤崎さんと赤司や。
『赤司征十郎(2602)/Lv.1/装備:コルトガバメント/状態:普通/アイテム:鋏/卒業生させた数:1』
『藤崎なつめ(2627)/Lv.2/装備:ベレッタM92/状態:普通/アイテム:無し/卒業生させた数:1』…………なんや、あいつらもう倒したんか」
「早いな……」
「赤司と藤崎サン、すげーな」
「この、『状態』って何だ?」
「んー……、ゲームとかだとあれじゃないか?『毒状態』とか、そういうやつ」
「なるほど」
「赤司より藤崎サンのがレベルたけーのは何でだ?」
「そら、藤崎さんがサバゲーやっとったからやろ」



表の情報は随時更新されるらしく、ドンドンと書き変わっていく。とりあえずこのノートパソコンは会議室に持ち帰った方が良い、という結論に至り、桜井が充電器と共に小脇に抱えた。



「他には……何もあらへんか」
「多分全部は見たと思うぜ」
「ほな、次の場所行こか。そろそろ授業時間も終わる。長居は危険や」



今吉がストップウォッチを見せれば、1時限目の残り時間は約1分30秒。急ぐぞ、と足早に情報室を出る。


























情報室の隣には、座席が階段状になっている教室があった。プレートを見れば、「物理講義室」と書かれてある。理科室などという括りではなく、教科単元ごとの名前であるからここは高校だろうか?とふと小堀は考える。しかし、その考えは急に立ち止まった青峰によってかき消された。



「どないした、青峰」
「……………………まて、何か居るぞ」
「まさか……、」



ズル、ズル、と何かを引きずるような音が廊下の奥から聞こえてくる。その瞬間、1時限目終了のチャイムが鳴った。授業の間の休み時間は10分間。今吉は思わず舌打ちをした。



「こないな時に……!タイミングの悪いやっちゃ!見たとこ、この辺りに普通教室はあらへん。逃げ場は無いで!」
「く……っ!正面突破か!?」
「それしかねーだろ」



青峰は首を回して、鉄パイプを構える。どんどんと何かを引きずる音は近づいてくる。今吉は桜井と小堀、福井を下がらせる。



「頼んだで、青峰」
「後でマイちゃんな」
「無事に出られたら、の話や」



ニヤリと笑って卒業生を待ち構える青峰は野性の動物そのものだ。廊下の角から現れた卒業生。そのスピードは非常に遅く、歩いてでも逃げられるのではないか?と思うほどだ。正面から見るとその卒業生のビジュアルに若干の恐怖は感じるものの、スピードが速くない為そこまでではなかった。



「何だコイツ……遅ェ!!」
「油断するやないで、青峰」
「わかってるっつーの!」



中々距離が縮まらないことに痺れを切らした青峰が走り、踏み込んで、オラァッ!と思い切り鉄パイプを振りかざす。グチャ、と振りかざした鉄パイプが頭にめり込んだ音がする。ヒッと悲鳴を上げて桜井は目を瞑る。「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛……!」と苦しみ悶えているのは見間違いではないだろう。



「ちっ……、まだ動いてやがる」
「……!青峰、首だ!首から上を重点的に叩け!」
「あ?首だぁ!?」
「よくあるだろ、ゾンビは首を切り離すと絶命するってやつだ!!」
「ホントかよ!」



どうなっても知らねぇぞ、と青峰は福井に言われた通り再び鉄パイプを振り上げて首から上を狙う。振りかざした瞬間、ふと、刀で切る要領で鉄パイプも振りかざしたらどうなるのだろう?と思い、勢いをつけて首から上を薙ぎ払う。すると、スパン!と首から上が切り離され、その勢いで頭が壁に打ち付けられた。グチャ、と壁に血しぶきが広がり、卒業生は全く動かなくなった。



「かー……、……グロいな」
「流石やな、青峰」
「凄いです青峰さん……!」
「行くぞ」



卒業生が倒れた上をそのまま歩いていく青峰。それに今吉達は続く。暫くして何かが気になった今吉が後ろを振り返ると、忽然と消えていた卒業生の姿。血だまりだけが残ったその場所を、ジッと見つめてみても、何も変わらなかった。















「…………………………どないなっとるんや」


























2時間目終了まで、残り42分。
卒業生在籍人数、33人。(現在Lv.1)
卒業生させたプレイヤー
青峰大輝(2601)
獲得アイテム
ノートパソコン1台
獲得場所
3階情報室


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