朝になり、再び教団はざわめいていた。せっかく戻ってきた元帥が、再び失踪したらしい。今度は、弟子を教団に残して。…しかも、今まで弟子を取らなかった元帥が、初めて弟子を取ったのだ…と。話に尾ひれがついて回っていた。


だが、多分マリアン師匠はまだ教団から出ていない。マリアの能力で隠れているだけだろう。そんな気がする。今日中に出発はするのだろうが、彼に限って早起きして出ていく訳はない。きっと、今もまだ何処かで寝ているのだろう。こういう時だけいびきを掻かずに寝るのだから、相変わらず自分の都合のいいように事を進めるのだ。あの時も、そうだった………………。


…そこまで考えて、はた、と止まった。“あの時も”…?原作に、クロスがいびきを掻かずに寝ている描写など、どこにもなかった。自分は、過去のクロスを知らないはずだ。…だけど、今脳裏に浮かんだ光景は一体……、何なのだろう。



まるで、自分の知らない間に、勝手に知らない記憶を植え付けられたようで、なんだか少し気持ちが悪かった。



自分の隣を、ふわっと風が通り過ぎた。なんだろうと不思議に思っていれば、頭に乗るポンとした感触と、酒とタバコの独特の匂い。あぁ、師匠がいるのだと、簡単に分かった。マリアの能力で姿を隠しているのだろう。


「俺は行く。せいぜい頑張れよ、奈楠」
『…行ってらっしゃい、師匠』
「奈楠!クロス元帥が居なくなったって!」
『リナリー……』


リナリーが来たことで、クロスは慌ててその場から離れる。その慌てように思わず笑うと、リナリーは不思議そうに首を傾げる。


『ごめん、何でもないよ』
「……またバックれたのね、クロス元帥…」
『あー、私のことも置いてったしなぁ』
「奈楠と居られるから、いいんだけどね」
『ふふ、私もリナリーと居れて嬉しい』











「お前の言う通り、また、会えたな…」


教団から離れ、思いを巡らす。新しく弟子にした彼女を、心の中で大切に思う自分がいることに、気付いていた。“彼ら”を見守る旅を、“彼女”の分まで自分は続けなければならない。奈楠が全てを知るまで、準備を進めておこう…と、心に決めたのだった。







グッバイ・ミスター

(せめて、ささやかな休息を貴方に)


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こんにちは!管理人の鶴賀です!
AKUMAでさえも、なれなくて。目を通していただき本当にありがとうございます!
これにて過去編は終了となります。次からはまた、原作沿いで物語が進んでいきます。完結するまで末永く、見守っていただければ幸いです。

これからも段々オリジナル要素が増えていきますので、表現力を上げられるように頑張りたいと思います!
それではまた、次回お会い致しましょう。

ーby.鶴賀
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