※過去編の最初の話はこちら。
翌日、奈楠の病室にはクロス以外のエクソシスト全員とリンク、リーバー班長にコムイが集まっていた。唯一婦長だけが入室を許され、他のナースやドクターなどは許可されなかった。
『…私のイノセンスの事を話すなら、まずは私が教団にいる訳を話さなくちゃならない』
教団にいる訳、と聞き、大半のエクソシストは首を傾げる。任務先で見つかった適合者だからじゃないのか、とか、イノセンスの所持者じゃなかったのか、など疑問は様々。
『…私が教団に来たのは、丁度8年前…』
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……8 years ago……
ヘブラスカに呼び出され、昇降機でヘブラスカの間へ向かうと、そこには酷くグッタリしているヘブラスカとそれを見つめるルベリエ長官の姿が目に入る。
「やっと来た…か、コムイ……」
「どうしたんだ、ヘブラスカ?」
「これは重大な問題ですよ、室長」
イノセンスが自ら逃亡するなど、由々しき自体だ。と言ったルベリエの言葉に目を見開く。
「どういう……ことです!?」
「今朝方……、2つのイノセンスが…私の内から…飛び出して行った…しかも……」
「その2つのイノセンスは、リナリーの黒い靴と“対になるイノセンス”と、“例の彼女”のイノセンスだそうです」
「……!!!!なんてことだ…」
告げられた事実に驚愕しかない。イノセンスが自ら逃亡したことと、そのイノセンスが例の2つであるということに関してだ。
「我が教団にとって、ハートの次に最も重要とされてきたイノセンスが2つも無くなるなど、言語道断ですよ。早く捜索すべきだ」
「……捜索部隊に指令を下します」
もし、伯爵の手に渡ってしまったら、と考えると体に震えが走る。頭を振り、邪念を振り払う。
「…頼んだぞ…コムイ……!!」
「ああ。全力で探す」
「よろしくお願いしますね、室長」
森で遭遇したAKUMAをイノセンスで破壊したところを捜索部隊に見られたのがつい先刻。私は捜索部隊に教団に半ば引き摺られるようにして連れてこられていた。しかも、それは私が適合者であるから、という理由だけではないらしい。通信から「例のイノセンスが見つかった」とか「適合者までいる」など、身に覚えのないやり取りまでされている。捜索部隊がやたらと焦っているのが、とても印象に残っていた。
『(……本物って、すげェ)』
「あー……、じゃあ門番の身体検査受けてー」
「AKUMAか人間か診断ーーーー!!!!」
パッ、とライトが投射されて門番の姿が目に入る。眼前にある門番の顔が、とても怖かった。ピコピコピコピコ……、とずっと音が鳴っている。
「コイツっ……映らない……!!バグか…!!?」
『(だよねー、うん。知ってた)』
消えたイノセンスの行方
(改めて告げられた事実に)
(自分がこの世界の人間ではないことを)
(痛感させられたのだ)
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