34-2.太陽を待ちながら
思わずナンシーが肩を竦めて僅かに、今度こそは少女らしい笑みを浮かべてから目を閉じた――「そうね」。
言い残し、ナンシーがすくっと立ち上がった。
「あらら、どこへ? まだ有難い話はいくつかあってだな……」
「あーあ。……残念だわ。もう少し早く貴方と会ってたら、私の気持ちは貴方に傾いていたかもしれないのに」
「ほえッ?」
こちらを惑わすようなその言葉に創介が目を真ん丸くさせた。
「……ウソ。チャラい男って生理的に受け付けないから」
「え、ちょ、ちょっと〜……」
創介の間抜けな声をよそに、ナンシーはスタスタとあちらへ行ってしまった。その背中を見送りながらも、何となく胸を撫で下ろしていた。
銀色の月灯りの下。
セラ――いや、ミイは脳裏を支配するその反響が近くなるのを知った。おおよそ耳鳴りに近いその雑音が痛みを伴ってざわめいた。
「……君は」
懐かしい声だった。
懐かしい、なんて言えるほど深い仲でもないが、まあそれなりに。砂利を踏んで歩くその音にミイが振り返る。
「君は、ユウ君……ではないですよね。じゃあ、神居ですか?」
どこか警戒したようにこちらへ歩いてくるヒロシと目が合った。
「いや。それとも竹垣の息子ですか?」
ヒロシが痛むのであろうこめかみ辺りを片方の手で押さえながら問いかけた。
「……違う」
ミイが即座に首を横に振ってそれを否定する。それから、少しだけ肩を竦めて言う。
「久しぶりだな。転校生。……色々と話したい事はあるけど、時間はもうほとんど残されていないんだ」
悪いけど、と付け足してミイはほんの少しばかり笑った。
UWAAAAAAAAAA!!!!!
というところで八章、完結。
ようやく最終章ですぜ奥さん……。