終盤戦


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02-3.ランカスター・メリンの右手VS俺ら



 トボけた外見に似つかわしくない中々の腕力と、そして何よりも不気味な事この上ない言動に凛太郎は当然怯えた。

 一真も一真できょとんとし、全く何を考えているのやらサッパリ読みとれぬそのウサギマスク男を前に茫然としている。

「は、離せ……」
「答えを聞くまで離れない! 離れないんだから!」
「――ああ、もうッ!」

 まあ、振りほどけぬほどでもない。凛太郎が勢い余って突き飛ばすと、尻餅を突いたそいつに向かって言うのだった。

「そーーーーーーだよ! テメエが気色悪いんだってーの! 意味分かんねえし、そのウサギの顔とか! こえーだけだっつーの! 気持ちわりーよ、ったく……」

 そのウサギマスクのせいで勿論表情が今どうなっているかは分からないが少なくともソイツ――ストライカーの身体が震えていた。

「あ……?」

 言い過ぎたのか知らないが、ストライカーはぶるぶるとその肩を震わせている。泣いているという見方もできるが、まあ、知った事では無かった。

「チッ……、ワッケのわからん――おい一真、行くぞ」
「う、うん……」
「待てやクソガキャ」

 途端、声色が思いっきり変化したかと思うと地べたに這いつくばっていたストライカーが立ち塞がるようにまたもや立ち上がる。

 仁王立ちしながら、ストライカーは腰に下げられているその警棒のようなものにすっと手を伸ばした。

「な……ンだぁ?」

 ストライカーはその警棒を持つと右手に構えた。かと思うと、そのバトンからバチバチと蒼白い火花のようなものがほとばしるのが見えた。

――スタンガンか? こりゃぁ……

 凛太郎が目を丸くしているとストライカーはそのバトンを水平に構えて来た。

「相手ンなったるわオラァア!」
「げっ……」

 その電撃を帯びた棒が襲ってくるのと同時に、凛太郎は慌てて一真を盾にしていた……。


 残る創介だったが、その光景にしばし視線を奪われていた。

――や、やべー……

 助けを求める様にセラを見れば、既にヒロシと一触即発の状態だ。それはもはや、二人の世界である。

「おい」

 呼びかけられて創介が慌てて正面へと視界を戻した。

「運がないなあ、兄さん。あんたどう見てもド素人だ。この中じゃ、ダントツにペーペーの白帯ちゃんだな」

 眼帯をはめたそのガラの悪そうな少年・ミツヒロに言われて、創介も舐められるものかと睨み返した。

「多勢に無勢ってのはスキじゃないけど、こっちは二人がかりだぜ。誰かが助けに来てくれるのを祈るっきゃねえわけだな」
「へ? 二人がかり?」

 ミツヒロの言葉に創介が怪訝そうに顔をしかめた。ので、ミツヒロも一瞬あっけにとられた。が、間があったもののすぐに取り繕い言うのだった。

「ああ、そうだよ。二対一、当然こっちが二……」
「いや、お前一人じゃん」
「は?」

 創介の言葉にミツヒロが今度ははっきりと不審そうな表情をさせた。それからミツヒロは自分を騙そうとしているのだとかそう言ってフェイントでもかける気かと思いつつもほんの一瞬のうちに、隣を見た。

「フジナミ……」

――いない……今まで横に立っていた筈のフジナミが影も形も無い。周囲を見渡すと代わりに紙きれが一枚置いてあった。

『おなかすいたので お菓子とりに いってきます』
「……野〜〜〜郎ぉおお……」

 紙きれをぐしゃぐしゃと握り締めながらミツヒロがわなわなと震えている……。

「で、どうすんだお前さん」
「るせー! こうなりゃ意地でもやったるわチンカスッ!」

 叫びざまミツヒロが殴りかかってきたので創介も慌てて身を引きざるを得ないのであった。


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