終盤戦


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02-2.ランカスター・メリンの右手VS俺ら



 そう言ってつかつかと前に出れば、それを迎える様にまりあが飛び出して来た。

「ちょっと! さっきからガキガキうっさいわね! こんな女だか男だかワケわかんないのに負けないんだから!」
「おー、行ったれ行ったれ」

 ミツヒロが囃し立てる様にその後ろから叫んでいる。

「ああ、もう……耳元でぎゃんぎゃん騒がないでよ。あと唾飛んでくんだけど、うざい」

 実に気だるそうに雛木が言うと、途端まりあの中で何かがキレたらしい。目にもとまらぬ速さで拳――いや正確には平手が雛木の顔めがけて飛んでいた。

「……うっさいわねこのブスッ!」
「ぶっ!」

 バチン、と勢いよく平手が決まりその衝撃か雛木が後ろへと一歩後退する。それから、頬を押さえてぶるぶると身体を小刻みに震わせていたがお返しにと言わんばかりに雛木もその手を振り上げていた。

「やりやがったなこのドブスッ!」

 これまたぱちーんと弾けるような音がし、まりあが後ずさった。

「何よっ! 裸のくせして! まりあのこの洋服はアンタの命より価値があんのよ!」
「やんのか! おー!?」

 もう完全に女子の口喧嘩の領域である。セラとヒロシに比べて平和といえば平和だが――女? の意地と意地をかけた勝負の傍らで、創介たちもまた選択を強いられているのだった。

「どうする、創介……」

 背後からこそこそと話しかけて来る凛太郎であったが残りもまたわけのわからない奴らばかりで、どれも手の内が読めなさそうな連中ぞろいだ。

「……女を斬るのは好かん、退いてくれ」

 有沢が刀に手すらかけずにナンシーにそう言った。交渉のつもりであろうか、だがそんな言葉にナンシーの決意が揺らぐ筈も無い。

 それどころかナンシーはもはや彼女の得意技のうちの一つである金的蹴りを早速繰り出して来た。

「ン☆@↑゛っ〜〜〜!?」

 意味不明の絶叫ののち、蹲って悶絶する有沢の背中に向かってナンシーが冷たげな眼差しをそのままに言い放った。

「……女だからといって甘く見たわね? 遠慮はいらないわ。斬るのがイヤというなら、その拳でかかってくればいいじゃない」
「お、うう……おへっ」

 腰をトントンさせながら有沢は痛みに耐え忍んでいる……。

「じょじょ、冗談じゃねー! 元々関係無いのにこんな化け物の巣窟にいられるか! 俺は先に車戻ってるからな!」

 何か次の日の朝には殺されていそうなキャラが吐きそうな台詞を残し、脱兎のごとく駆け出すのは凛太郎だ。

「あ、凛太郎……」

 一真が何か言いかけるので凛太郎が律儀に足を止めて振り返る。

「なに……」

 瞬間立ちふさがるように現れたのは――そう、例のウサギ男ことストライカーだった。

「!? 何じゃお前……」
「こっ・こっ・ここから先は通しませーーん……ウフ、フフ……ぎゅふっ」
「き、きき、きもちわりーな! 何だてんめえ」

 一真と肩を寄せ合いながら、凛太郎が得体の知れないそいつに向かって叫んだ。ストライカーがその言葉に反応でもしたように、ピクンとその肩を震わせていた。

「不気味すぎんだろ、貴様! つーかどけ、邪魔だボケ!」

 叫びながら凛太郎がストライカーを押しのけようと手を伸ばすと、逆にその手首をがしっと掴まれた。

「っ……!? な、何だよコイツ……」
「き、気持ち悪い? 僕が? ねえ、今僕の事気持ち悪いって言ったの?」
「なな、何!? 何なの、ちょ……離せやっ! キショいんだよ……」
「ねえ! ねえったら!? 僕が!? 僕が気持ち悪いの!? ねえ、ねえ、ねえねえねえねえねえねえねえねえねえ! 僕の顔が気持ち悪いって言いたいの!? ねえ!? ねえってば!? ねぇええええ〜〜〜!?」

 ストライカーはウサギの顔のまま、ぐいぐいと凛太郎の手首を捻り上げてにじり寄ってくる。


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