終盤戦


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15-1.死神の骨をしゃぶれ



ルーシーはそれから帽子を被り直すと、もうすっかり戦意喪失気味のミミューに向かって邪悪に笑いかけた。

「おい、お前」

 ゆらゆらと揺らぐ視界の中、妖しく微笑むその顔が二重にも三重にもぶれて見えていた。

「無視すんなよ、オラッ!」
「あぐっ」

 ダメージを逃がさないためなのか、頭部をしっかりと鷲づかみにされたまま強烈な平手を食らわされた。ミミューは痛みによって反射的に浮かんだその涙の先、血の味を噛み締めながらルーシーを見つめ返した。

「なあ、おい。なあ、なあ、なあ。オイ、起きろってば。なあ。なあなあなあ」
「う……、」

 髪の毛を掴まれたまま前後に揺らされた。只でさえぐらぐらとする視界が更にシェイクされているようで、吐きそうになった。遊園地で乗り心地の悪いアトラクションに興じている時のそれとよく似ていた。

 ルーシーはミミューの頭部を掴むもう反対の手で釵を握り、柄の部分で肩を叩いていた。余裕でもこいているようである。

「一から十まででどの数字が好き? ねえ、分かる? 一から十ね。選ばしてさしあげましょう」
「な、にが……」

 ほとんど言葉として成り立っていなかったように思えるが、とにかく。ミミューが何とかかんとか答えると、ルーシーは子どもでもあやすように可愛らしく小首を傾げてから笑んで見せた。

「簡単な事じゃないのぉ。一から十。どれが好き?」
「あ……、っ」
「何々?……十! そう十! 十がいいんですね! なああああぁ〜〜〜るほどおおおおぉっ! よし来た! じゃあその十倍の百だ! 僕は今最高に気分がいいからね、サービスしちゃいましょう! 百、です! 百で行きましょうか〜!」

 目の前でこの男は楽しそうにひたすら笑っている……。

 そもそも、こんなキチガイに関わったのが運の尽きだ。きっと自分が罪を犯したあの時から、運命は決まっていたのだろう。

 恐ろしくて仕方のなかったこのルーシーが、自分を然るべき場所へと連れて行ってくれる死神のように思えてきた。今、ルーシーに抱くのは畏れの念等ではない。だけど祈っていた。自分の命はいかように扱われてもいい。だけど一目あの子に会いたかった。

 目を閉じると、先に浮かんでいたその涙が一筋落ちた。

「……そおれいーちっ!」

 そして、感傷に浸っている暇なんかねえぞと言わんばかりにルーシーが鷲づかみにしていた頭部を振り回した。

「い゛ッ……」
「にーぃ!……さぁあああんっ!」

 謎のカウントを読み上げる間も、ルーシーは可笑しくてならなそうに笑い続けていた。もう痛みをいちいち感じている暇さえない……ほんと気が遠くなりそう。



 ミミューはさっきまで感じていたどこかセンチメンタルな思いなんか粉々に壊されていくのを覚えた。

「う……あ、ああ、っ」
「いたいでちゅねえええ、いたーいいたーい、おお、痛〜〜〜い」

 ルーシーが泣き真似を交えながら楽しそうに言った。

――駄目だ、力が入らない……

 もう指の一本にさえ力が込められない。このまま意識が飛んでしまえばきっと楽だろう、みんなには悪いけど……なんて思い始めた矢先にだった。

「ナオ!」

 また別の誰かの声がした。それでルーシーが身体ごと振り返って、その手を放した。解放されたところで立ち上がることもできないのだが――ミミューがずるずるとその場に倒れこんだ。

「――誰だよ! 人が盛り上がってる時に、空気を読めよコラァッ!……それとなあその名前で気安く呼ぶな! 呼んでいいのは兄さんと姉さんだけだッッ!」

 神経質そうにその帽子を何度も被り直したりしながら、ルーシーが叫んだ。ちなみにその名前を呼んだのは言うまでもなく。

「そいつにそれ以上、手を出すな」

 凛太郎が腰に手を当てた状態ででーんと構えている。ちなみにその隣には……。

「女王たまぁ。しゅきしゅき、だいしゅきぃ。もっとおちおきちてくだしゃぁあい」

 完璧に幼児退行を起こしたストライカー(素顔)が、首輪を繋がれて犬みたいに四つん這いになった状態でハイハイしている。その手綱を引くのは勿論、一真である。





このナオって名前の響きは
昔懐かしのゲーム夕闇通り探検隊の
主人公のナオたんから拝借してるんですけど
中身と見た目は違うよな多分。
見た目はどっちかっていうと学校であった怖い話の
荒井昭二(アパシーの綺麗な方)だよね。
荒井キュン、後に美形になったけど
SFC版の方は本当にモサっとしてて
友達が「何でこの人ヘルメット被ったまま
学校に登校してるの?」とかひでーこと言ってたわ。
まあ確かに頭被り物みたいだけどさぁ



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