終盤戦


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14-1.僕を呼ぶ声



 元々小柄な身体であったし、正面からの殴り合いは自分にとって不利ではあった。

 それでも、小柄なりにそれを活かした戦い方をしてきたつもりだ。そう、今だって……ヒロシの回し蹴りを前に押し込んでかわそうとするが、これはフェイントだったのだろう。いわゆる変則蹴りと呼ばれるその蹴りが、真横から上段へと蹴上がるのはほんの一瞬だった。

「あっ……!」

 咄嗟に顔面を守ったものの、その勢いに押し込まれてしまった。防いだ腕ごと蹴り倒される形になって、セラはそのまま地べたに叩き落されて這いつくばった。顔面を擦ったせいで頬がじりっと熱かった。

 ヒロシは上げていた片脚を降ろしつつ、静かに言った。

「……さっきまでの勢いはどうしたんですか?」
「――っ……」

 這った状態のまま、セラはぎゅっとその拳を握り締めた。

――くそっ……

 奥歯を、ぐっと噛み締めていた。

「まあまあ、でしたよ。貴方」

 無様に這いつくばったままのセラを見下ろしながらヒロシが呟いた。言い置いてから、ヒロシが一歩、また一歩と足を進め始めた。セラが唇を噛み締めた表情のままその顔を持ち上げた。

「大丈夫ですよ。そんな怯えた顔をしなくても、殺しはしませんから。……色々と、聞きたいこともあるので」

 ヒロシは足元の邪魔な物を蹴ってどかすと、先ほど投げ捨てたその拳銃を拾い上げた。歩きながらガチャッ、とコッキングさせて、セラの頭上へと突きつけた。

「――が。まだ抵抗すると言うのなら、話は別ですがね」
「ッ……」

 セラの目がもう少しだけ、大きく見開かれた。その瞳の中に、銃口を突きつけるヒロシの姿が映っていた。その自分が肩で呼吸をしている事にふと気がついた。セラが、その手の平を握り締めた。同時に砂利やら小石やらをかき集めて掴んでしまった。だけど、指の隙間からぼろぼろと零れ落ちていった。

 ヒロシが決断を迫るかのようにその目を細めた。

――……僕は……、

 そうだ。あれから、僕は勝てたんだっけ?――先ほどの記憶の、続きだった。相手は複数。こっちは一人。倒れた机と転がる椅子と、泣き叫ぶ女の子たちとそれから……。

「――セラッ!」

 騒がしくなった脳内の喧騒を打ち破るようにその声は真っ直ぐに、それでいて澱みなく。実に鮮明な音響でセラの遠ざかる意識の奥底へと届いていた。




放送事故で思い出したけど、
昔ユリゲラーが超常現象系の番組に出演してた。
それで自分の超能力を証明するために、
「今からテレビ越しに念力を送ります。
なのでテレビの傍に壊れた時計を
置いて下さい、直ります」とか
言うものだから母と面白がって実際に置いたら
本当に時計が直って動き出したことがあった。
母に聞いてもしっかり記憶してる。
あれは何だったのか……こわい……



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