終盤戦


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10-1.堕天使の羽響



 理解した瞬間、二人の影が重なった。

 それもほんの一瞬で、二つの影が互いに弾き合ったように分かれる。ルーシーから繰り出された蹴りをかわすと、ミミューが反対の脚をすいと持ち上げていた。少し屈んだルーシーの頭部目がけての踵落としだ、上方に跳ねあがったその脚にルーシーの目がちらと動いた。

 だがルーシーは大した構えも取ろうとはしない。

 それが何かの策であるのか、それとも本当にただ単純に咄嗟に対応がきかなかったのか、いやはやこの程度の蹴りくらいどうってことないだろうと判断されてしまったのか――ミミューの踵がルーシーの頬を蹴り飛ばしていた。

 ルーシーの身体ががくん、と膝もとから崩れ落ちる。いとも簡単に。それは激痛で沈んだ、というよりは衝撃で立っていられなくされたというような感じにミミューの目には映った。多少の違和感を覚えつつもミミューは降下するルーシーの、今度はもっとも効くとされる顎めがけて反対足での回し蹴りを食らわせた。

 それは……ここまでを見れば見事な快進撃でしかないが、ミミューは安堵していない。こんなにもあっさりと、決着がつくとは思えない。

「……ッ」

 蹴られた勢いで床をごろごろと転がったルーシーだったがその動きを利用しながらひょいと立ちあがって見せた。

 踵で踏みとどまりながら立ち上がったルーシーは、先に受けたダメージなど何も効いていないように見えた。

「……はぁーい!」

 陽気なテンションのまま、ルーシーは片手を持ち上げてこの余裕の挨拶だった。笑顔さえ振りまきながらルーシーはその自慢のマントやら制服についたゴミをぱんぱんと払い始めた。

「うん、ちょっーとびっくりしました。ちょっとですけどね」
「――お前は……、まさかと思うが痛みを感じないのか?」

 ミミューが眉間に皺を寄せつつ呟くとルーシーはズボンを払っていた仕草を止めて上半身を持ち上げた。

「……お! 勘がいいですねえ、手合わせをしていてそれにすーぐ気が付いたのは君が初めてです。おめでとう!」
「馬鹿な……、そんなヤツいるわけ」
「いるんですよ、これが。いるんですよねえ。ほーーーら、君の目の前に」

 からかうように言ってルーシーが自分の身体を指差して微笑んだ。

「……、化け物――か」

 あざけるように言ってから、ミミューが笑った。おかしくて笑ったのではない。反射的に笑うしかなかった。人間、恐ろしい事があると咄嗟に笑顔を作るしかなくなるとは聞いたことがあったが本当だとは。




小学校の時、
世界まるみえだったと思うけどあの番組って
結構ハードなもんばんばん流してたよな。
事故で片腕なくした人の再現映像とか未だに
思い出補正でめちゃくちゃ怖いです。
実際大した映像ではないのかもしれんけど。
で、その世界まるみえでやってた
無痛症の人の映像。
痛みを感じないので平気で火に手をくべたり
(当然火傷して腕ぐずぐず)、
割れたガラスの上歩いて平然としてたりして
正直めっちゃ怖かった記憶があります。
そんなトラウマの寄せ集めが隊長の一部でもある。



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