27-2.なお、雨天決行につき
ようやく二人が戻ってきたところで、全員が集合した。ミミューがみんながいる事を改めて確認すると、みんなの方に向き直った。
「えーと、何か……色々心配かけてごめんね」
へらっと破顔させてミミューが言った。ちょっと照れ臭そうにしながら、ミミューは歯をのぞかせて微笑する。
「創介くん」
「ん?」
「ありがとう。君が、真っ先に来てくれたってね」
「いやあ、でも実質セラと有沢の頑張りっていうか……」
礼を言われて嬉しいのには変わりは無いのだろう、創介がニヤニヤしながら首を横に振った。
「ううん、それでもありがとう。かっこよかった」
「いやー、そんなの知ってるって……」
「……これ僕からのお礼っ」
言うなりミミューは座席から身を乗り出したかと思うと、創介の頬に手を添えた。分かる人はすぐに分かったと言うが、チュっと音を立ててかーるくキスをしたのだった。
何事も無かったようにミミューはまた元通りに座り直して、ハンドルを握り締めた。
「△☆※%あっ!?」
創介が意味不明の絶叫を洩らしたかと思うと唇を押さえてもんどり打った。
「ちょ、ちょへっ……神父! 今、今、今今今! 今ーーっ! 今のっ、今のっ、今何したのぉおおお!」
「えへへ、内緒ね内緒」
創介は何故か凛太郎に抱きつきながら思い切り身をよじっている。凛太郎は凄く迷惑そうにしているが、構う事無しであった。
「や、やだもー! 何なのこの人っ!? 俺が一体何したっていうのさぁあ!」
「鬱陶しいなあ、もう離れろよ……」
「あ、ナンシーちゃん。道だけど先に聞いてたのでいいのかな?」
唐突にミミューに呼びかけられて、それまで考え事をしていたように俯いていたナンシーがはっと顔を上げた。言葉を詰まらせながらもナンシーは答えた。
「え……、ええ。いいわ、それで……」
雛木の訝るような視線が突き刺さるようで痛かったが……、ナンシーはまたいつも通りのポーカーフェイスに立ち戻ると俯いた。
ミミューは上機嫌なのかニコニコ顔である。しばらく車を走らせていると、ミミューの携帯が振動した。
「おっと」
車を停め、ミミューはディスプレイに表示されたその名前にまた嬉しそうに笑った。恐らく恋人のものであろう。ミミューは分かりやすい笑顔のままその電話に出た。
「……もしもし?」
『もしもし――』
先程話していたばかりだというのにも関わらず、もう懐かしくさえ思った。ミミューはまた涙が出そうになるのをぐっと堪えた。
「ん、なに? どうかしたのかい」
『いや、只少し……行く前にもう少し声が聞きたくなっただけだ』
ガイは相変わらず雨空の下にいる。金網に背を預けながらガイは雨の降り注ぐ灰色の空を見上げた。
「ミミュー、生きて……必ず生きて帰って来るんだぞ」
『……うん』
ガイは金網から離れて、今度はその向こうに広がる景色を見つめた。恐らくこの道を、ミミュー達は行くのだろう。名残惜しそうにその道を眺めながらガイは長いため息を洩らした。
「……戻ってきたらお祝い、しような。いい店知ってるから連れて行ってやる。――はは、でもミミューはお酒弱いからな〜」
『そんな事無いよ、ガイが強すぎるだけじゃんか。僕だって飲める』
自分より年上の癖にこういうところはひどく子どもっぽい。ミミューのそんな仕草にガイは顔を綻ばせて笑った――また、すぐにこうやって笑いあえる日が戻るのを心から望んだ。
いや、ミミューは……そんな日々を取り戻すために戦いに出たのだ。自分の使命を全うするために。それなら自分もそれを送り届けてやることと……その帰りを待っててやるまでだ。
『ガイ』
「ん?」
『――愛してる……』
照れる様子もなくミミューがそう言った。いつも照れてばかりでそんな事言えないが、今日ばかりは言ってあげるべきだろう、きちんと。
ガイは咳ばらいをし、覚悟を決めた様に言った。
「ああ、俺も……」
そこで一旦、息継ぎをした。
「愛してるよ――」
ザーザーと雨は相変わらず降り注いでいて……雨音と時折混じる雷雨のせい、だったのかもしれない。ガイの背後に立っているその影に、全く気がつかなかったのは。
滝のように降りしきる雨の中を――……その中を立っているのは、黒いマントをはためかせた男。端正に整った顔立ちの中、両目だけが冷たい光を宿しているようだった。
言うまでもなく、その男――ルーシー……、だった。
ホラーか何か?
今あなたの後ろにいるの状態。
さとるくん、メリーさんに続く珍種の化け物。
ドラマだったらここで突然ブラックアウトして
次回予告が始まるパターンだよな。
ほんとはここにも佇んでる隊長のイラストを
お願いしようか迷いつつも
隊長だらけになってしまうので自重したんですよね〜
それはそれでいい、という
本物の乙女も中にはいそうだけど